パーパスを軸とした持続的な企業価値の向上
2026年6月
将来を信念と情熱で創る
取締役 専務執行役員
グループ企画担当
マーケティング統括部門長
サステナビリティ推進委員会 副委員長
蛭川 初巳
「人」「技術」「顧客基盤」を基盤に、多様性を競争力へとつなげ、持続的な価値創造に向けた経営を進化させていきます。
これまでの50年の歩み
日本経済は、バブル経済の崩壊以降、長期にわたり停滞局面が続いてきました。その間、企業経営には、短期的な成果の追求にとどまらず、中長期的な価値創造と持続的成長を実現するための構造的な変革が求められてきました。近年は、国として成長を志向する国家戦略が示され、投資環境や企業統治の枠組みが整備されるなど、企業を取り巻く前提条件は大きく変化しています。2015年に策定されたコーポレートガバナンス・コードは、こうした変化を象徴する制度の一つであり、企業には、より高い説明責任と資本効率を意識しつつ、中長期的な価値創造に取り組む姿勢が求められるようになりました。
こうした環境変化を背景に、当社グループは、創業からの歩みをあらためて振り返り、次の50年を見据えた経営の方向性を整理してきました。当社グループは、キヤノン製事務機器の販売会社として誕生以来、全国のお客さまに先進のキヤノン製品を届けることを使命とし、地域販売拠点の拡大や販売店との提携を通じて、販売チャネルの多様化と強化を進めてきました。これにより、幅広い顧客基盤を形成するとともに、マーケティング力を着実に蓄積し、国内におけるキヤノンブランドの確立に貢献してきました。また、製品販売にとどまらない付加価値の創出を志向し、1970年代にはソフトウエア事業に着手しました。以降、他社製品の取り扱いやIT分野への展開、さらにはM&Aや資本業務提携を通じて事業領域を拡大し、時代の変化に応じた事業構造の進化を重ねてきました。その過程で、多様なバックグラウンドを有する人材がグループに参画し、人材の多様性もまた、着実に広がってきました。
お客さまと共に成長することを大切にしている当社グループでは、「人」「技術」「顧客基盤」を価値創造を支える強みとして培ってきました。これらはいずれも、多様性に富んでいます。カメラやビジネス機器、半導体関連装置をはじめとする多様なプロダクトに加え、SIサービスやITO・BPOなどのITサービスまで、顧客ニーズに応じた幅広い価値提供を行っています。また、多彩なビジネスパートナーとの連携のもと、大手企業から準大手・中堅企業、中小企業、さらには個人のお客さまに至るまで、幅広い顧客基盤を有していることも、当社グループの特長の一つです。
![ITソリューション事業拡大の沿革 [社会の動き]ハードウエアの普及→デジタル化・OA化→ネットワーク化→クラウド化サイバーセキュリティ→IoT・AIの進化 社会の動きを予測し、的確な経営戦略を推進→[経営戦略の変遷]カメラ・事務機販売により販売チャネルを拡大 1960~70年代 1968年・キヤノン事務機販売設立・キヤノン事務機サービス設立 1969年・キヤノンカメラ販売設立 1971年・キヤノン販売設立 1978年・富士システム開発(キヤノンソフトウエア)を子会社化→他社製パソコン・サーバー等の販売強化 1980年代 1981年・東証二部上場 1983年・東証一部上場・アップルコンピュータ社と販売提携 1985年・日本アイ・ビー・エム社とワークステーション、パソコンの販売提携→ITインフラ事業の開始 1990年代 1990年・通商産業省「システムインテグレーター」認定・日本サン・マイクロシステムズ社と販売提携・フローティング・ポイント・システムズ社と販売提携・日本ディジタルイクイップメント社と販売提携 1991年・クレイ・リサーチ社と販売提携 1992年・シリコングラフィックス社と販売提携→基幹業務系SIの強化 医療ITに参入 2000年代 2003年・住友金属システムソリューションズを子会社化・ESET販売開始 2006年・FMS(現 キヤノンITSメディカル)を子会社化 2007年・アルゴ21を子会社化 2008年・キヤノンITソリューションズ設立・ビックニイウス(現 クオリサイトテクノロジーズ)を子会社化→ITアウトソーシング・クラウドサービス開始 2010年代 2012年・西東京データセンターがサービス開始・キヤノンITSがCanon IT Solutions(Thailand)を設立 2013年・キヤノンITSがMaterial Automation(Thailand)を子会社化 2018年・ESET社と合弁会社イーセットジャパンを設立→保守・運用サービスを強化 2020年代 2020年・西東京データセンター2号棟竣工 2022年・キューピーファイブを子会社化 2023年・東京日産コンピュータシステム(現キヤノンITS TCS事業部)を子会社化 2024年・プリマジェストを子会社化](/-/media/Project/Canon/CanonJP/Corporate/ir/library/integrated-report/value-enhancement/image/history.png?h=383&iar=0&w=880&sc_lang=ja-JP&hash=D0753F5466CEC56622879CCDCE1F6F96)
これからの50年を見据え、多様性をさらなる強みに
一方で、多様性の広がりは、組織や経営の軸が分散しやすくなる側面も併せ持っています。成長投資を継続し、多様な人材・技術・事業を競争力として束ねていくためには、グループ全体を貫く軸が不可欠であるとの認識に至りました。
当社グループは、キヤノングループの理念である「共生」のもと、1988年よりサステナビリティ経営に取り組み、人・社会・自然との調和を意識しながら、事業を通じた社会課題の解決を進めてきました。近年は、こうした取り組みを、従来の「社会からの要請への対応」を中心とした活動にとどめることなく、事業との連動性を高め、事業を通じた社会課題解決の実効性を高める段階へと発展させてきました。社会課題が複雑化・高度化する中で、マーケティングの力を通じて、より広範な社会課題の解決に貢献し続けていくため、2024年1月には「未来マーケティング企業」を宣言するとともに、当社グループの社会的存在意義を示すパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を公表しました。

パーパス体現を通じ、共感の輪が広がる
パーパス公表以降、経営トップによる継続的な発信や対話の場の創出などを通じて、社内外への浸透を進めてきました。その結果、パーパスを自らの業務に引き寄せて捉え、事業価値の向上につながる行動として体現しようとする社員が着実に増えています。こうした動きと連動し、事業活動の中でも、社会的価値の創出と収益機会の拡大の双方に寄与する取り組みが、具体的な形となって現れ始めています。例えば、気候変動への適応としての防災・減災や地域の安心・安全への貢献、金融取引の高度化に伴う本人確認や不正取引防止、さらには地域包括ケアを支える医療情報の連携といった分野において、当社グループの強みや知見を生かした取り組みが、事業として展開され、新たな価値創出の機会にもつながっています。また、こうした取り組みの広がりと併せて、パーパスの策定や浸透の考え方に関する社外からの問い合わせや意見交換、ワークショップなどの機会も増加しており、当社グループに対する共感と信頼が、結果として中長期的な事業基盤の強化にも寄与しつつあります。
共感・信頼の蓄積を企業価値の持続的な向上につなげる
当社グループでは、サステナビリティ経営を推進するにあたり、マテリアリティを「キヤノンMJグループとステークホルダーにとって重要性の高い注力すべきテーマ」と定義しています。ステークホルダーの期待や要請に応えるとともに、事業との関係性や中長期的な企業価値への影響を踏まえた経営課題としてマテリアリティに取り組んでいます。これらの取り組みをグループ一体となって推進するため、2021年2月にサステナビリティ推進委員会を設置しました。同委員会は代表取締役社長を委員長とし、サステナビリティに関わる事項全般について統括的な役割を担っています。パーパスの検討・策定にあたっては、検討プロセスの後半よりブランド戦略委員会との共催とし、パーパスの内容に加え、社内外への発信や浸透の在り方についても併せて議論を行いました。サステナビリティ推進委員会における討議・決議事項は経営の根幹に関わる重要事項であることから、2023年以降は取締役会傘下に位置付け、取締役会による直接的な監督のもとで運営しています。
パーパスの浸透と体現が進む中で、2025年にはマテリアリティの見直しを行い、2026年からの新たなマテリアリティを策定しました。この見直しでは、企業理念を起点に、パーパス、長期経営構想、マテリアリティ、中期経営計画へと一貫して連なる経営体系とすることを重視しました。この経営体系のもとで、パーパスは理念にとどまらず、マテリアリティを通じて具体的な経営課題や行動へと展開され、各部門および社員一人ひとりの職務・業務目標と結び付いていきます。
信念と情熱を持って将来を創り出していく
持続的な成長を実現していくためには、財務と非財務を連動させ、継続的な収益創出力を強化していくことが重要であると、当社グループは考えています。こうした認識のもと、企業理念を起点に、パーパス、長期経営構想、マテリアリティおよび中期経営計画へと一貫して連なる経営体系を整えてきました。現在は、この経営体系の実効性を高めていく段階にあります。その中で、財務と非財務の一体化を具体的な経営の仕組みとして形にしていこうとしている象徴的な取り組みの一つが、「エンゲージメント向上ループ」です。エンゲージメント向上ループは、「人材の高度化」「顧客満足」「社員の働きがい」の三つの要素を核として構成されています。
これに、2024年よりサービスプロフィットチェーンの考え方を取り入れ、三つの要素の間に位置付けられる項目について、その関係性や意味合いをより明確にするための詳細化や指標化を進めています。こうした取り組みを通じて、多様な経験や専門性、価値観を有する人材の力を事業活動に生かし、社員の成長や働きがい、顧客への提供価値の向上といった非財務の取り組みを、売上・利益などの財務の成果へと結び付け、さらに次の投資や人材育成へと還流させていく、価値創出の循環を形成していくことを目指しています。
その実効性を左右するのは、制度や枠組みそのものではなく、その背景にある考え方や狙いが、社員一人ひとりの判断や行動を支える共通の拠り所となっていることが重要だと考えています。多様な経験や専門性、価値観を持つ社員が、互いの考えに耳を傾け、率直に想いを交わしながら未来の姿を描いていく。そうした対話を情熱を持って積み重ねていく姿勢を、日常の仕事の中に根付かせ、企業文化として育てていくことが、組織に一体感と前向きな推進力をもたらします。その積み重ねこそが、同じ意識と志のもとで次の挑戦へ踏み出す原動力になると、私は考えています。
私は、将来は予測するものではなく、信念と情熱を持って創り出していくものだと考えています。この考え方のもと、環境変化に向き合いながら、持続的な価値創出に向けた経営の在り方を不断に磨き続けていきます。

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本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。