パーパスを軸とした持続的な企業価値の向上
これまでの50年を振り返り、これからの50年を見つめてパーパスを体現し、持続的成長を目指す

取締役 常務執行役員
グループ企画、グループコミュニケーション担当
マーケティング統括部門長
サステナビリティ推進委員会 副委員長
ブランド戦略委員会 委員長
蛭川 初巳
キヤノンMJグループは1968年の創業以来、社会の動きを予測し、お客さま、市場の変化に先んじて経営戦略を展開し、大きく三つの期を経て、事業領域を拡大してきました。2024年1月に公表したパーパスのもと、ステークホルダーの皆さまとの共創・協業をより一層進めることで解決できる社会課題の領域を広げ、進化し続けていきます。
三つの期を経て現在へ
キヤノン製事務機器の販売会社として誕生したキヤノンMJグループの創業期は、先進のキヤノン製品を全国のお客さまに届けるために、地域販売拠点の拡大や販売店との提携などを通じて、販売チャネルを多様化し、強化しました。その結果、顧客基盤を拡大し、マーケティング力を培い、国内におけるキヤノンのブランド力を高めることができました。また、お客さまに提供する付加価値を高めるため、さまざまな製品のデジタル化に先駆け、1978年には富士システム開発を子会社化してソフトウエア事業を始動し、キヤノン製品以外の独自事業を拡大し始めました。
1980年代からの第二期は、多様化するお客さまのニーズに応えるため、アップルコンピュータ社をはじめとし、他社製のワークステーションやサーバーなどの販売へと事業の幅を広げ、商社機能を強化しました。1990年代には、インターネットの普及に伴い、パソコンやサーバー、ネットワークに対応する人材を増やしました。時代の変化に合わせて独自の付加価値をつけるための技術を取り込み、それに対応する人員や組織などを強化してきた結果、1990年に通商産業省(現 経済産業省)の「システムインテグレーター認定」を受けることができました。
第三期の2000年代には、お客さまとの結びつきを強めるため、ハードウエアからソフトウエアへとビジネスの軸足を移すことを意図し、お客さまの基幹業務へと領域を拡大しました。2003年に製造、流通などの業種向けSIやセキュリティに強みを持っていた住友金属システムソリューションズを子会社化、2007年には金融や公共分野に強いアルゴ21を子会社化し、2008年にこれらを統合してキヤノンITソリューションズを発足させました。これにより、基幹業務系のシステム開発やインフラ事業へと事業領域を広げ、お客さまのITシステムの企画・設計・開発・構築・保守・運用までのITライフサイクルをサポートする体制を構築しました。
その代表的な例として、西東京データセンターを開設し、2012年に1号棟、2020年に2号棟のサービスを開始しました。高度なセキュリティや耐震性能などに加え、運用面でも高い品質を誇るデータセンターを自社施設として保有することにより、ITアウトソーシング事業、クラウドサービス事業を拡大しました。
こうした長年の積み重ねを経て、2024年は全売上に占めるITソリューション事業の売上は約半分を占めるまでに高まりました。
![ITソリューション事業拡大の沿革 [社会の動き]ハードウエアの普及→デジタル化・OA化→ネットワーク化→クラウド化サイバーセキュリティ→IoT・AIの進化 社会の動きを予測し、的確な経営戦略を推進→[経営戦略の変遷]創業期 カメラ・事務機販売により販売チャネルを拡大 1960~70年代 1968年・キヤノン事務機販売設立・キヤノン事務機サービス設立 1969年・キヤノンカメラ販売設立 1971年・キヤノン販売設立 1978年・富士システム開発(キヤノンソフトウエア)を子会社化→第二期 他社製パソコン・サーバー等の販売強化 1980年代 1981年・東証二部上場 1983年・東証一部上場・アップルコンピュータ社と販売提携 1985年・日本アイ・ビー・エム社とワークステーション、パソコンの販売提携→ITインフラ事業の開始 1990年代 1990年・通商産業省「システムインテグレーター」認定・日本サン・マイクロシステムズ社と販売提携・フローティング・ポイント・システムズ社と販売提携・日本ディジタルイクイップメント社と販売提携 1991年・クレイ・リサーチ社と販売提携 1992年・シリコングラフィックス社と販売提携→第三期 基幹業務系SIの強化 医療ITに参入 2000年代 2003年・住友金属システムソリューションズを子会社化・ESET販売開始 2006年・FMS(現 キヤノンITSメディカル)を子会社化 2007年・アルゴ21を子会社化 2008年・キヤノンITソリューションズ設立・ビックニイウス(現 クオサイトテクノロジーズ)を子会社化→ITアウトソーシング・クラウドサービス開始 2010年代 2012年・西東京データセンターがサービス開始・キヤノンITSがCanon IT Solutions(Thailand)を設立 2013年・キヤノンITSがMaterial Automation(Thailand)を子会社化 2018年・ESET社と合弁会社イーセットジャパンを設立→現在 保守・運用サービスを強化 2020年代 2020年・西東京データセンター2号棟竣工 2022年・キューピーファイブを子会社化 2023年・東京日産コンピュータシステム(現 TCS)を子会社化 2024年・プリマジェストを子会社化](/-/media/Project/Canon/CanonJP/Corporate/ir/library/integrated-report/value-enhancement/image/history.png?h=553&la=ja-JP&w=880&hash=C12DD5D3AB3AA5CB0C16353D4001DA6A)
お客さま起点の組織体制に変革し、財務体質・経営基盤を強化
「顧客主語」の考え方のもと、お客さまをより深く理解し、お客さまごとに異なる課題やニーズに対し、より付加価値の高い最適なソリューションを、より効率的に提供し続ける体質の強化を目指し、2018年に「商品・販売チャネル」に基づく体制から、「市場・顧客」に基づく体制へと組織を変更しました。並行して、当社グループが付加価値をつけにくい分野の事業からは撤退するとともに、当社グループが持つ強みを発揮できる領域・業種に注力し、顧客層別の戦略にシフトすることにより、収益性の向上に努めてきました。
当社グループは創業以来、キヤノンの企業DNAである「進お客さま起点の組織体制に変革し、財務体質・経営基盤を強化取の気性」を発揮し、常にお客さまや市場の変化を捉え、新しいことに挑戦し、事業領域を拡大してきました。その過程で、専門性の高い人材や得意領域を持つ会社を多くグループに迎え入れてきました。
今後も継続的に成長投資を行い、より多くの多様な仲間を迎え入れることで業容をさらに広げてまいります。バックグラウンドや働き方が異なるグループ社員が一丸となって、お客さまと共に未来に向かうにあたり、当社グループの社会的存在意義を示すパーパスを2024年1月に公表しました。

「私たちは何者か」と「つくりたい社会」を掛け合わせてパーパスを制定
パーパス制定に際し、代表取締役社長を委員長とし、ビジネスユニット長などの事業責任者を委員とするサステナビリティ推進委員会において、当社グループの歴史をひもときながら、私たちがこれまで社会に果たしてきた役割や私たちの強みや“らしさ”とは何かといった「キヤノンMJグループとは何者か」についてや、外部環境の変化や未来予測データなども踏まえたありたい姿とともに、「どのような社会をつくりたいか」について何度も討議を重ねました。
多様なバックグラウンドを持つ社員や当社グループに仲間入りする社員を含め、グループ全社員が一丸となって、未来志向で新たなる挑戦に臨み続けていくために、単語一つ一つに込める想いにこだわって最終的な言葉を磨き上げました。またパーパス策定にあたり、検討の後半からサステナビリティ推進委員会の開催をブランド戦略委員会との共催とし、社内外への発信や浸透活動も併せて討議しました。

一語一語に込めた意思

「想い」には、社会課題が複雑化する中で、ステークホルダーの想いと、私たちキヤノンMJグループ自身の内発的な原動力を大切にしたいという意思を込めています。「技術」には、イメージングやITなどで培ってきたテクノロジーに加え、発想力、提案力、傾聴力やコミュニケーション力などといったスキルや、経験、人脈、業界知識も含むノウハウや知見なども含んでいます。また、キヤノンMJグループが持つ技術のみならず、多様なビジネスパートナーが持つ技術も含んでいます。
そして「切り拓く」には、常に市場を開拓してきた開拓者精神をあらためて明確に表明したいという想いを込めています。
また、パーパスを象徴するシンボルマークは、さまざまな想いと技術を、大きさと色の違う一つ一つの輪で多様性とともに表現しています。それらがつながり続けていくことで、新しい未来が無限に循環していくことをイメージしています。
想いの伝播

「未来を担う人」に灯をともすことで「会社の未来」に灯がともる、をコンセプトに「ミライビトーク」と名付けた社長と社員との直接対話を2023年、2024年で計15回実施し、延べ約2,400人の社員が参加しました。社長からパーパスに込めた想いを伝え、参加した社員からは「パーパスの説明動画など事前に視聴して理解はしていたものの、直接想いを聞けて心の距離も近くなったと感じた」などの感想があり、社員に想いが伝播していきました。
パーパス体現者の増加に向けて
2024年に行ったグループ従業員意識調査の結果、前年比で「パーパスへの共感」は約20ポイント上昇し、「仕事を通じた社会への貢献実感」は約10ポイント上昇しました。一方で、新しく加わったグループ会社や、お客さまとの直接的な接点が少ない一部の部門などは相対的に低い状況です。今後は、これまでのパーパスの浸透から、パーパスを含むサステナビリティ活動全体と、各社員の業務との結びつけの理解促進などを図っていくことにより、ばらつきの解消や、パーパス体現者のさらなる増加に注力していきます。

パーパスを軸に、社内外コミュニケーションにおけるブランディング活動を刷新
パーパスの公表に合わせ、社内広報のコンセプトを、パーパスを体現している社員の熱意を伝えることで、共感とやる気の輪を広げる形へと変更しました。コンテンツに加え、発信媒体の変更、効果測定の導入などの刷新の結果、2024年の社内調査において半数の社員が社内外とのコミュニケーションが増加したと回答し、約70%の社員が「未来への挑戦」などを感じると回答しています。
また、「ミライアングル」や「未来へ繋ぐ想い」と題し、パーパスを体現する社員を2023年から当社グループのWebページにて取り上げています。「ミライアングル」では、大切なお客さまや大事な仲間の想いに寄り添い、ともにより良い未来を創造していくために挑戦を続ける社員がいること、「未来へ繋ぐ想い」では、ステークホルダーの想いとキヤノンMJグループのビジネスを掛け合わせることで、未来を切り拓いている取り組みを紹介しています。
キヤノングループの企業認知度は高いものの、キヤノンMJグループの企業認知度はそれほど高くありません。一方で、調査によると、当社グループと取引があるお客さまからの相談意向は約80%と高い状況です。一度取引を開始すると、継続的にご相談をいただける確率が高いため、企業認知度向上を意図し、2024年に企業広告の展開に取り組みました。
「超ワクワクする未来を実現する会社」というキャッチフレーズには、未来マーケティング企業として、未来志向で社会課題を解決し、希望や喜びに満ちた未来をつくっていきたいという想いを込めています。全ての始まりとなるのは想いであり、課題を解決したいという想いを大切にしていきます。
今後も、ステークホルダーの皆さまから期待し続けていただけるよう、また、その期待をさらに超えた「想像を超える未来」を切り拓いていけるよう、グループ一丸となり取り組んでまいります。



持続的成長をより確かなものに
当社グループは、お客さまが必要とされるものをご提供できるよう先を見通しながら、M&Aなどを通じて事業領域を拡大してきました。社会の不確実性が高まる現代において、顧客ニーズ、市場の変化や技術の進化のスピードが加速する中、キヤノンMJグループは、パーパスを体現し、ステークホルダーの皆さまとの共創・協業をより一層進めることで解決できる社会課題の幅や領域を広げ、進化し続けていきます。
「ミライアングル」など当社グループの発信をご覧いただいたステークホルダーの皆さまから、当社役員・社員にお声がけいただく機会が増え、より多くの対話が生まれ始めています。既存の枠にとらわれない新たな価値創造に果敢に挑戦し続けるキヤノンMJグループにぜひご期待ください。
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本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。