このページの本文へ

社長メッセージ

2026年6月

「2026-2030 長期経営構想」は、さらなる飛躍に向けて取り組む5年間に

代表取締役社長 社長執行役員
足立 正親

「2021-2025 長期経営構想」の振り返りROE10.4%と5期連続の増収増益

この5年間、当社グループは利益ある成長を加速させ、売上、営業利益、ITソリューション売上、ROEの全ての経営指標において、2021-2025 長期経営構想(以下、21-25長経)で掲げた目標を達成し、ROE10.4%、5期連続の増収増益、過去最高益の更新という成果を上げることができました。
​こうした成果は、キャッシュの創出とその配分の在り方を経営の中核に据え、事業成長と資本効率向上を両立させる取り組みを、5年間にわたり一貫して積み重ねてきた結果だと考えています。
​2021年3月の社長就任後、4月に21-25長経を発表し、私はまず、事業活動を通じて安定的にキャッシュを生み出す力を高めること、そして創出したキャッシュを成長投資と株主還元の双方にバランスよく配分することを基本方針としてきました。
​この方針のもと、成長投資については5年間で2,000億円規模を目安に、事業投資、人材投資、システム投資を継続的に実行してきました。特にITソリューション事業を成長領域と定め、技術力を磨きながら、M&Aや出資を通じて事業基盤と提供価値の拡張を進めてきました。その結果、ITソリューション事業は、全事業における売上構成比の50%を超える規模へと大きく成長し、21-25長経の売上目標3,000億円を1年前倒しで達成した上で、最終的には3,434億円の実績を残すことができました。その中でも収益性が高く、注力している「保守・運用サービス/アウトソーシング」領域も目標以上に拡大でき、事業の質も高まっています。また、キヤノン製品事業においても市場成長率が限定的な中、お客さまのニーズを的確に捉えた付加価値の高いソリューション提案を継続することで、収益性の向上に取り組んできました。
​株主還元についても、着実に拡充してきました。自己株式取得は、4回にわたり実施し、合計967億円の取得を行いました。配当は、配当性向を30%以上から40%以上に引き上げ、総額718億円を行い、1株当たり配当額を2020年比で2.8倍まで高めました。これらの株主還元施策は、成長投資を継続しながらも適切に株主へ還元することで、資本配分に規律をもたらし、経営における投資判断や収益性への意識を一層高めることにもつながりました。結果として、5年前には1,800億円あった親会社への短期貸付金も全て解消しました。
​業績が好調だったことやIR活動を私も自ら積極的に進めた効果もあり、アナリスト・投資家との面談件数はこの5年で2倍以上になりました。その対話内容は、社外取締役を含む取締役や事業責任者にフィードバックし、経営活動に反映させています。
​その結果、21-25長経で掲げた経営指標を全て達成し、株価も最高値を更新し高値水準で推移しています。

強みを磨き、お客さまと共に成長した5年間

当社グループの強みは、人と技術、そして顧客基盤であり、これらの強みを磨いてきました。お客さまをより深く理解し、お客さまごとに異なる課題やニーズに対し、より付加価値の高い最適なソリューションを提供し続けるとともに、M&Aや出資により新たな技術、顧客基盤を獲得してきました。また、人材の高度化については、多様化するお客さまのニーズに対してはもちろんのこと、新たな技術の進展にも素早く柔軟に対応し、さらなる付加価値向上につなげていくための専門教育に注力してきました。スキル向上により社員一人ひとりの生産性は着実に高まっています。その結果、お客さまへの提供価値が向上し、顧客満足につながることで、それがさらに社員へ還元されていくといった、当社グループが注力する「エンゲージメント向上ループ」の好循環も創り出すことができてきたと実感しています。
​やるべきことを着実に進める中で、一層スピード感を上げて注力していかなくてはならない課題もより明確になってきました。第一に、ITソリューション事業を成長させる上で生成AIへの取り組みを加速させる必要があります。これまでも社内での業務効率化や開発効率向上に活用するとともに、サービスへの実装を進めてきましたが、加速度的に社会へ浸透しつつあるこの技術革新を追い風として最大限生かせるよう取り組む必要があります。また、生成AIに限らず新たなテクノロジーや、自前では獲得が難しい他社のノウハウなどを取り入れるためにも、さまざまなステークホルダーとの協業もますます重要性が増しています。
第二に、サービス型事業拡大をさらに加速させることです。ITソリューション事業が当社グループの中核事業へと成長したことは既に述べましたが、収益性の高いキヤノン製品事業の大きな市場成長が見込めない以上、さらにサービス型事業の拡大を加速し、利益ある成長を実現しなければなりません。そのためにも、人的資本の強化は引き続き重要テーマだと考えており、高度人材の育成・確保に向けて、スキルの底上げ・リスキリングを促す仕組みの拡充や、即戦力となるプロフェッショナルな外部人材の獲得も進めていく必要があると考えています。

「2026-2030 長期経営構想」事業創造企業グループを目指しさらなる飛躍へ

本年から、2026-2030 長期経営構想(以下、26-30長経)が始まります。2016年から2020年は、事業の選択と集中を行い、市場・顧客に基づく組織体制へ変更することで、筋肉質な体質へ転換してきました。2021年から2025年は、成長投資へと軸を移すとともに資本効率を高めながら利益ある成長を加速してきました。そして、この先2026年から2030年は、さらなる飛躍に向けて取り組む5年間とします。
2030ビジョンは、「人と技術の力で明日を切り拓く事業創造企業グループ」としました。「人」は当社グループ社員、お客さま、パートナーなど全てのステークホルダーを、「技術」はICTのテクニカルスキルや保有する特許技術などに加え業界・業務知識、ノウハウ、知見など広義の技術をイメージしています。
26-30長経の基本戦略は、(1)事業を通じた社会課題解決による、持続的な企業価値の向上、(2)サービス型事業の成長を中核とした高収益企業グループの実現、(3)経営資本強化による、好循環の創出、としました。
2030年の経営指標としては、売上8,500億円、営業利益750億円、ROE12.0%を目指します。また、売上のうちITソリューション事業の売上を5,000億円、そのうち「サービス・アウトソーシング」※1の売上を2,000億円にまで高めます。成長投資については5年間で2,000億円を投資予定であり、配当による株主還元については1,000億円を予定しています。
これらの経営指標を目指す上での事業ポートフォリオの考え方として、ITソリューション事業は利益ある成長をさらに推し進め、キヤノン製品事業の収益性を強化するとともに、専門領域や新たな事業を拡大していく方向性は従来と変わりません。ITソリューション事業については成長と収益性向上を両立しながら、M&Aも加え、中核事業としての拡大を実現します。またキヤノン製品事業では、市場全体の成長余地は限定的ですが、シェア1位であるカメラ、レーザープリンターなどの強いポジションは維持しつつ、シェア3位のMFPなどシェア拡大余地のある分野でさらなる拡販をすることで、売上を落とすことなく、利益率の向上を追求していきます。専門領域については産業機器、特に半導体関連事業を中心に右肩上がりの安定成長を追求していきます。この領域では、技術力と共に海外の優れた技術・製品を見極めて国内展開する「目利き力」が鍵であり、競争優位性に直結します。当社の目利き力に対するお客さまからの評価は高く、今後もOJTを含む教育によりそのようなノウハウや技術の継承にも重視して取り組んでいきたいと思っています。
また、新たな事業創出では、上述の通り、二つの方向性で引き続き取り組みを進めています。特に当社グループにとって経験がない領域に踏み込んでいくために2024年に新規事業の創出に取り組む専門組織を新設し、同時に100億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)ファンドを立ち上げました。既にCVCを通じて14社への出資を実行し、複数案件でPoC※2を開始しています。早期にPoB※3のレベルに引き上げ、2030年までにビジネスとして一定の売上規模に育てることができればと考えています。
ITソリューション事業の拡大を中心に、サービス型事業の創出に向けた投資の実行・M&A・出資といった「事業投資」に加え、人材の高度化に向けた教育制度の拡充などの「人材投資」、社内システム構築などの「IT・設備投資」に5年間累計で2,000億円を予定しています。なお、M&Aに関しては、手元資金の約1,600億円の一部を予備費として充当することも視野に入れています。
事業投資については、サービス型事業を増やしていくために無形資産への投資も行い、当社がシステムの構築からデータセンターによる運営まで行いながら、アプリケーションをはじめとするサービスを提供していくことも考えています。すでに金融機関向けでは先行していますが、それ以外の市場に対しては十分とは言えず、そこに踏み込んだ投資を進め、拡大を目指します。
M&Aでは事業領域の拡大と新たなサービス型事業の創造に向けて、注力領域ごとに不足する技術・リソースを補完する企業を対象に検討していく方針です。もちろんサービス・アウトソーシングの強化は引き続き重要なテーマであり、今後も機能強化のため必要があればM&Aを実行することに変わりはありません。また、今後は特にセキュリティ分野での規模拡大が必須と認識しております。サイバーセキュリティ、フィジカルセキュリティを組み合わせた提案は当社の強みであり、引き続き、特徴的な技術を持った企業との共創を積極的に行ってまいります。中でもフィジカルセキュリティである映像ソリューション領域はキヤノンブランドとの高い親和性を生かしながら、社会の課題を解決する能力を一層高めてまいります。
これらの取り組みは、パーパスに基づいたマテリアリティを軸に中期経営計画へと落とし込み、事業創造企業グループという新しい姿に向けて着実に実行しつつ、社会課題解決を一層加速させていきます。

  • ※1
    従来の「保守・運用サービス/アウトソーシング」を「サービス・アウトソーシング」に変更し、SI・ソリューション(旧SIサービス)やITプロダクト・システム構築(旧ITプロダクト・システム販売)に区分されていたもののうち自社の知財を活用したソフトウエアサービスを組み込みました。
  • ※2
    Proof of Concept:概念実証
  • ※3
    Proof of Business:ビジネス実証

生成AIを活用し、サービス・アウトソーシング売上高2,000億円へ

26-30長経のITソリューション売上目標である5,000億円の達成に向けては、いかにサービス型事業を拡大させ、サービス・アウトソーシングの成長を実現できるか──これが最大のポイントになります。利益を伴うITソリューション事業の拡大を目指すため、最も収益性の高いサービス・アウトソーシングの売上2,000億円は必達と言っても過言ではないと考えています。
​そのため顧客層別に、大手、準大手・中堅企業向けには、映像×AIソリューションなどによる「価値創造インテグレーション」およびBPO・ITアウトソーシングによる「ビジネスプロセスサービス(BPS)」、中小企業向けには「中小企業向けフルサポート」、また全顧客に向けたサイバー×フィジカル、クラウドセキュリティサービスなどの「トータルセキュリティ」と、四つの注力領域を定め、各領域でKPIを設定しました。領域・顧客層ごとにそれぞれのニーズに応じた戦略を定めて実行し、2030年にはITソリューション売上の40%をサービス・アウトソーシングで稼ぐ構図を想定しています。
​さらにITソリューション事業を成長させる上で欠かせないのが生成AIへの取り組みです。すでにサービスへの実装は進んでいますが、前述した通り、業務効率化を推進する中で社内に蓄積される経験・ノウハウを強みとして社外へ展開する取り組みも強化していきます。
​サービス型事業は、業界やお客さまが抱えている課題について深く知り尽くすことはもちろん、自社ならではの強みを生かしたソリューションを提案し、信頼を獲得した先に築くことができます。単に収益性の高いビジネスではなく、お客さまの業務や課題の変化に伴走し続ける中で、関係性そのものを価値に変えていくビジネスだと私は考えています。この先当社グループが5年、10年、その先も持続的に成長していくためにも、この領域にはこだわって注力していきたいと考えています。

キヤノンMJグループの強みと戦略お客さま起点で深める事業戦略とシナジーの最大化

当社グループは大企業から中堅・中小企業、さらに一般消費者まで幅広い顧客基盤を持ち、カメラ・事務機・半導体製造関連装置などの物販からITサービスに至るまで多種多様な領域で事業を展開することで、長年にわたりグループ内に技術・ノウハウなど膨大な経営資源を蓄積してきました。当社グループのような広範なアセットを保有する企業は、SIerやOA機器メーカーなどの競合他社の中でも稀有な存在だと自負しています。
大手、準大手・中堅企業向けに事業を展開するエンタープライズセグメントでは、一般的なテーマにとどまらず、お客さまの業務を深く理解し、お客さま自身も気づいていない潜在的な課題にまで踏み込んで解決策を提案することで、業種や業務に関する知見・ノウハウを蓄積してきました。
私は以前エンタープライズセグメントのビジネスユニット長とキヤノンITソリューションズの代表取締役社長を兼務していたのでよく分かりますが、当社グループの業種・業務に対する深い理解に基づいた提案はなかなか他社には踏み込めない領域だと、お客さまの経営層からも極めて高い評価をいただくことが多く、これは当社グループならではの強みだと思います。そして、これからはさらに2024年にグループ入りしたプリマジェストとのグループシナジーを最大化させます。プリマジェストが持つ技術力とキヤノンMJの顧客基盤を相互活用することに加え、それぞれの強みを生かした新しいサービスを創出することで、まだまだビジネスを拡大できる余地はあると考えています。目標達成に向けては、競合企業に対しても当社グループが圧倒的に勝つことができるこの領域で、さらに強みを磨き続けていくことが重要と考えています。
また、中小企業を担当するエリアセグメントのキヤノンシステムアンドサポートでは、「まかせてIT」をはじめとした、中小企業をフルサポートする各種サービスを提供しています。中小企業向けにDX推進を展開する企業は多く存在しますが、IT領域の課題解決だけでなく、経営層の課題である環境経営、コーポレート・ガバナンスの強化やIT投資計画、人材育成までをカバーするのがキヤノンS&Sの特長で、この点で大きな競争優位性があると考えています。経営者の真の困り事は何か──今のキヤノンS&Sのトップは以前、直販によるマーケティングを経験しており、お客さまを深く理解し、お客さま起点でサービス型事業を創造していくにあたり、その知見・ノウハウが大いに生かされていると感じています。
個人のお客さまを担当するコンスーマセグメントでは、各種サービスを共通で利用するための個人向けアカウントである「Canon ID」を活用し、1to1マーケティングを強化します。お客さま一人ひとりに合わせたコミュニケーションを行い、長期にわたりキヤノン製品を利用していただく展開を進めます。カメラに関心の高いお客さまへのファンベースマーケティングを推し進めるとともに、静止画と動画のハイブリッドの需要の獲得や若年層の新たなキヤノンファンを取り込みながら、シェアNo.1を堅持します。
また、インクジェットプリンターにおいては、ユーザーの印刷需要を的確に捉えたマーケットアプローチを通じてシェアNo.1を狙うとともに、ミニフォトをはじめとした新たなプリント価値を創出していきます。
プロフェッショナルセグメントは、産業機器、ヘルスケア、プロダクションプリンティングの三つの事業が属しています。産業機器では半導体市場の需要変化の波が世界的に非常に大きいですが、企業の投資機運はますます高まっています。技術力と共に「目利き力」を競争優位性として、お客さまの多様化したニーズと海外の先端技術であるシーズをマッチングすることで、特定領域におけるプラットフォーマーとしての強みに磨きをかけます。ヘルスケアでは、2023年のキヤノンメディカルシステムズとキヤノンITSメディカルによるヘルスケアIT事業の統合シナジーが着実に出てきており、売上規模を拡大しています。医療制度改革が進む中、電子カルテを中心とした医療現場に最適化したITソリューションを一層推進していきます。プロダクションプリンティングでは、小ロット、パーソナライズ化と変化する商業印刷市場のデジタルシフトと効率的なワークフローへの変革を支援していきます。

人的資本の強化未来を創るプロフェッショナル集団への進化

当社グループでは、人材戦略の一つとして「人材の高度化」を掲げており、26-30長経の期間では、この「人材の高度化」を起点とした、エンゲージメント向上ループの好循環をさらに加速したいと考えています。
その取り組みの一環として、2025年4月より、事業ごとに社員のスキルに応じてレベルを認定する、デジタルスキル標準(DSS)※4を活用した高度ITS人材認定制度を開始しました。知識・実績の二つの側面から審査を行い、レベル1~5の5段階のうち、レベル4以上の高度ITS人材をDXエキスパートとして認定します。さらに、レベル別の育成ロードマップの作成とそれに準じた教育、成長支援によりプロフェッショナルな人材の育成に取り組んでおり、やり切るという強い覚悟のもと、その充足率を100%とすることを目指しています。
2030年、さらにその先の未来には、当社グループがお客さまの抱える課題にとどまらず、私たちが属するオフィス機器やITサービス等の業界が直面する課題、さらに複数の産業に共通する社会課題の解決にも対応できる技術力・提案力を備えた存在になっていたい、それが私の想いです。そして、それを実現するためにも、ITソリューションに限らずあらゆる領域において社員のスキル向上に資する施策を打ち、“事業創造”に資する人材の育成に注力していきたいと考えています。

  • ※4
    2022年経済産業省とIPAが発表したデジタル時代に必要なスキルや知識を体系化した指針

組織風土私が大切にしていること ー「任せて・任せず」ー

2021年からの5年間は、コロナ禍という事業環境が激変した厳しい局面でスタートしましたが、先々の不確実性がさらに大きくなると言われる中、戦略の確度を上げるためには、お客さまの環境変化に柔軟・迅速に対応できるよう現場力を高めていく必要があると考えていました。また、先行きが不透明で、不確実性の高まる時代だからこそ、若手からベテランまで誰もが失敗を恐れずに既存の枠を超えて挑戦し続けることが大切であり、その風土づくりは必要不可欠です。
そこで私はトップマネジメントとして、分かりやすく簡潔な言葉で経営の大きな方向性を示し、社員を鼓舞して背中を押すことを意識してきました。
例えば21-25長経期間中には、年間活動方針の中で年度ごとに「加速」「挑む」「やり抜く」「仕掛ける」といったシンプルなキーワードを掲げ、さまざまな会議体や全社員に向けた月次メッセージなどで事あるごとに発信してきました。現場を統括する各ビジネスユニット長、事業部長は私の想いを理解し、「いま自分たちがやるべきことは何か」を自律的に考え、具体的な取り組みに落とし込み、覚悟と責任を持って粘り強く組織をけん引してくれました。そして、その指揮のもと、最後の最後まで知恵を絞り、試行錯誤を重ねてくれた現場社員の努力と工夫がもたらした成果であることは言うまでもありません。このように経営メッセージを通じて事業責任者から現場社員までの一体感を高められたことが目標達成の成功要因の一つになったと考えています。
私は、組織のリーダーを任されるようになってから「任せて・任せず」というマネジメントの在り方を、一貫して実践してきたつもりです。必要最小限の指示や助言をしながらも、現場に裁量を与えて任せながら仕事を進めるというこの考え方は、現場の管理職に対しても研修の場などを通じて伝え続けていることでもあります。部下にとってのチャレンジングな仕事は、任せながらも目は離さず、状況に応じて声をかけ、アドバイスしながら部下の成長を促すことが重要です。また、そのためにも「心理的安全性」を保つことがとても大切だと伝えています。
そうしたことを私が発信し続けていることもあり、現場では「任せて・任せず」をベースに、「こんなことをやりたい」「あんなことをやりたい」と積極的な声が上がってくるようになり、前向きに取り組む風土がかなり醸成されてきたように感じます。2024年に制定したパーパスも、グループ社員の志を一つに束ね、こうしたポジティブな変化を生み出す、確かな追い風の一つになっていると感じています。当社グループの最大の財産は「人」ですから、一人ひとりの能力を最大限に発揮できるよう、これを一過性のものにせず、グループ全体の風土としてさらに根付かせていきたいと考えています。

社長と社員の対話風景

ガバナンス継続的にガバナンスを強化

ガバナンスについては、21-25長経期間中に社外取締役の増員、女性社外取締役の選任、指名・報酬委員会の構成変更、特別委員会の設置など、経営の健全性を担保できる体制の整備を着実に進めてきました。
当然ながら、ガバナンス強化は継続的に取り組む課題と認識しており、機関設計、取締役会の構成などさまざまな課題について今後も真摯に検討・議論を重ね、必要があれば見直していきます。ただし、単に体制や形式を整えても実態が伴わなければ意味がありません。重要なことは実効性のあるガバナンス体制の構築です。
その実効性を高めるための前提として、役員間の多様性を生かした対話の充実や課題認識を合わせることを目的に、当社では合宿形式による執行役員会を年2回開催しています。社外取締役を含めた役員が一堂に会し、時間をかけて議論を交わすことにより相互理解が深まり、それによって年間を通じて行われる取締役会、指名・報酬委員会、特別委員会での議論の質も高まっていることを実感しています。社外取締役からは、経営を監督する視点での的確なアドバイスをいただいています。その意味で、当社では現状、実効性の伴ったガバナンスの質を継続的に高められていると認識しています。
また、私の後継を含む次世代経営人材候補の選抜についてですが、当社では社外取締役過半数で構成される指名・報酬委員会で審議が行われます。また育成については人材戦略委員会において具体的な育成のための施策が検討され、すでに次世代経営人材選抜研修「Quorum12」「Quorum15」※5の中でビジネススクールでのスキル強化、他社で経営の実践を学ぶ「越境学習」などさまざまな施策を推進しています。2030年に向けては、これらの施策の一層の拡充を図ることで、次世代の経営人材が常に複数名育っているような体制を構築していきたいと考えています。

  • ※5
    Quorum12は部長クラスの選抜研修、Quorum15は課長クラスの選抜研修

最後にビジョン実現に向け果敢に挑戦し、利益ある事業拡大を目指す

代表取締役社長 足立 正親

私は「期待される、愛される、魅力のある会社」になろうと社員に言い続けていますが、それを言い換えれば「企業価値を高める」ということです。期待されず、魅力のない会社に成長の余地はありません。
期待され、魅力ある会社であるためには、お客さま、パートナーをはじめステークホルダーの皆さまの想像を超えた提案をし、それを「やり切る」ことで存在意義を認めていただく必要があります。「この件はキヤノンMJグループにお願いしたい」「キヤノンMJグループなら必ずやってくれる」と最初に相談される、そのような会社になれば、おのずと私たちの掲げている目標は達成できるはずです。
2016年からの5年間は筋肉質な企業体質への転換、次の5年間では利益ある成長の加速に向け取り組んできました。26-30長経は、さらなる飛躍に向けて挑戦する5年間にしたいと考えています。
ビジョン実現に向けて、当社グループの挑戦は始まったばかりです。今後も変革のスピードを緩めることなく、お客さまや社会の課題解決を通じて、利益ある事業拡大と持続的な企業価値の向上を進めてまいりますので、なお一層のご支援、ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。

  • 本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。