社長メッセージ
強みを生かし、社会課題解決の幅を広げることで着実に成長し続ける

代表取締役社長 社長執行役員
足立 正親
5期連続の増収増益を目指す
私が社長に就いて早4年が経ちました。就任4年目にあたる2024年は4期連続で増収増益を達成し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益において、過去最高益を更新することができました。その結果、2021年に「2021-2025 長期経営構想」で設定した当初計画を全て前倒しで達成しました。また、事業収益を拡大すると同時に資本効率を意識した経営に取り組んだ結果、ROEは2024年に9.6%となり、10%台に近づいています。その取り組みの一例として約2,000万株の自己株式の公開買付けを実施しました。
2025年は「2021-2025 長期経営構想」および「2022-2025 中期経営計画」の最終年度であり、5期連続の増収増益を計画しています。ITソリューション事業の売上は400億円上方修正し、3,400億円を目指します。これにより、同事業の売上構成比は50%に達する見込みです。また、キヤノン製品事業については、お客さまに引き続き高付加価値な提案を行うことで収益性を高めていきます。この4年間、「利益を伴ったITS事業拡大」と「既存事業の更なる収益性強化」を着実に進められていると実感しています。
成長の源泉を磨き続ける
こうした当社グループの成長を支えている競争優位性の源泉は、幅広い「顧客基盤」、優位性のある「技術」を駆使したソリューション、そしてそれらを創り出す「人」です。
当社グループは、大手企業から準大手・中堅企業、中小企業、個人のお客さままで幅広い顧客基盤を有していますが、日本で私たちほどの「広さ」と「深さ」を兼ね備えている事業者は他にいないのではないでしょうか。この「広さ」と「深さ」は数年で築き上げられるものではなく、1968年の創業以来、私たち独自のノウハウと手法で先代から次代へと脈々と引き継ぎ、築き上げ、磨き続けてきました。お客さま以上にお客さまの業務を理解しているからこそ、または、「お客さまのお客さま」の課題までも把握しているからこそ、お客さま自身が気づいていない潜在課題の特定や解決策を提示することができます。その長年の積み重ねが現在のお客さまとの強固な信頼関係のベースになっています。経営トップの方々との関係性が深いことも特長の一つであり、顧客基盤の強さの表れだと思っています。私は営業畑を約40年歩んできましたが、事業責任者の時代には役員の方々を含めたお客さまとの商談を年間100件以上実施していました。この役員の方々へのプレゼンテーションは、先代から引き継ぎ、次代に引き継いだ多くのことの一つです。
優位性のある「技術」を生かしたソリューションについては、自社製品としてドキュメント機器を持ちながらITソリューションを展開している企業は他にもありますが、当社グループはドキュメントソリューションにとどまらず、より基幹システムに近いところを手掛けていることが特長です。またシステムインテグレーターとして見た場合、他の大手システムインテグレーターと同規模のシステム開発案件も受注していますが、われわれは情報の入出力を行うキヤノン製品を持っており、それら入出力機器とシステムの連携性において大きな強みがあると考えています。例えば、画像AI連携プラットフォーム「Bind Vision」は、当社グループ独自の画像解析技術を活用し、キヤノン製のカメラで撮影した画像から煙検出と水位測定のAIが迅速に異常を検知するソリューションです。これは、当社グループの技術とキヤノン製品の組み合わせによる典型的なソリューションの一つです。地域の防災・減災を支援し、安心・安全な社会の実現に貢献しています。
「顧客基盤」と「技術」を生かしたソリューションを創り出し、それらを磨く「人」の育成にあたっては、多様化するお客さまのニーズに合わせて、内容を絶えず変えながら専門教育を実施しています。また、当社グループの事業領域の変化・拡大に伴い、特に他社製のIT機器やソフトウエアの取り扱いが増加し始めた1980年代頃から、社員のリスキリングに継続的に取り組んでいます。当社グループにおけるIT製品・ITソリューションの取り扱いは40年以上になりますが、技術の進化のスピードはますます速くなっています。社会の動きに先んじた技術を獲得し、お客さまや社会の課題の解決に資する質の高いご提案ができるよう、社内育成に加え、M&A、出資などの手段を通じた外部人材の登用を積極的に進めています。大事なのは、さまざまなバックグラウンドを持ち、当社グループに仲間入りした「人」を真に受け入れる文化であり、それが当社グループの強みの一つであると自負しています。
持続的な成長に向けて
このような当社グループの強みも踏まえ、そして次世代、未来や地球への想いを持って、キヤノングループの「共生」の理念のもと、2024年1月に当社グループのパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を公表しました。このパーパスは約2年かけて、役員間で幾度となく忌憚のない意見を交わし、100以上もの案から言葉一つ一つにこだわって制定しました。このパーパスに込めた想いを、全国のグループ各社の現場に足を運び、私自身の言葉で直接社員に対面で伝え、語り合う「ミライビトーク」をパーパス公表前の2023年から実施しています。新型コロナウイルス感染症の流行により、対面での交流がかなわない時期を経て、全国各地の社員とようやく対面で意見を交わせるようになりました。多様性に富む約18,000人のグループ社員の志を一つにするとともに、ステークホルダーの皆さまとの共創・協業をより一層進め、社会課題解決を加速していきたいという想いを実現する必要があるとあらためて感じています。そして、グループ全体にパーパスを体現する取り組みが徐々に生まれ、広がっています。
10年先を見据えた領域の拡大
パーパスの公表と同時に、新規事業の創出に取り組む「R&B(Research & Business Development)」の専門組織を立ち上げました。社会課題は複雑化、深刻化しており、不確実性に満ちています。私たちは、言語や国籍を問わず志を同じくする、国内外のスタートアップや教育機関、行政などと共にオープンイノベーションを推進し、新たな価値創造に取り組んでいます。2024年はコーポレートベンチャーキャピタル「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」を通じて9件の出資を実施しました。現在の当社の事業領域からすると、飛び地と見える領域にも出資しましたが、近い将来、皆さんに新規事業としてお披露目できることを楽しみにしています。
ITソリューション事業では、注力すべき四つの領域※を定め、サービス型事業モデルへの変革を加速させることにより、利益を伴った事業成長を目指しています。特に、Edgeソリューションや保守・運用サービス/アウトソーシングを中心に、当社グループが拡大したい領域の企業や獲得したい機能を持つ独自性の高い企業に当社グループの仲間として加わっていただいています。2023年はITインフラの設計・構築、システム保守・運用やデータセンターに強みを持つ東京日産コンピュータシステム株式会社(現 TCS株式会社)、2024年はDXを活用したBPOサービスに強みを持つ株式会社プリマジェストがM&Aによりグループ入りしました。
当社グループの強固な顧客基盤を活用してTCSやプリマジェストのソリューションを提供し、また両社のお客さまに当社グループのソリューションを提供するなど、相互の強みを生かしてシナジー創出による事業規模拡大に向けて確実に前進しています。M&Aは事前の見極めはもちろんのこと、グループ入り後の統合をいかに円滑かつ迅速に行うかが肝要であり、1978年に初めてM&Aを実施して以降、継続してM&Aを実施し、そのケイパビリティを磨いてきました。パーパスを制定した理由の一つが、ここにあります。当社グループはこれまでの多くの企業の仲間入りにより成り立っており、多様性に富んでいます。そして、これからもさらに強化したい技術や機能は、積極的にM&Aや出資により獲得を進めます。多様性を尊重し、それを企業価値創出につなげる意思をパーパスに込めています。2025年までに2,000億円以上の成長投資を実行することを掲げていますが、2024年までにその約70%を実行しました。今後も、状況を見極めながら、当社とのシナジー効果が発揮できるM&Aや出資に注力していきます。
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「Edgeソリューション」「HOME、IT保守・運用」「セキュリティ」「ITO・BPO」
事業拡大を支えるガバナンスを強化
業績の着実な成長からも、それを支えるガバナンスの実効性が保たれていると考えていますが、一般的な親子上場のリスクとして、親会社と子会社の間での利益相反等が挙げられます。そのため、上場子会社として、ガバナンスに対する当社の真摯な姿勢をご理解いただくことを含め、少数株主の利益保護の観点から説明責任を果たす必要があると考えており、その一つとして、2024年1月に独立社外取締役3名から構成される特別委員会を設置しました。特別委員会は2024年に5回開催され、親会社からの仕入れに関する確認のほか、公開買付けによる自己株式の取得について審議されました。また、2025年3月には財務・会計の経験・知見を有する女性の社外取締役をさらに1名選任し、これにより取締役会の半数を独立社外取締役としました。これまでも、2023年に女性の社外取締役を1名選任し、指名・報酬委員会に占める独立社外取締役を過半数へと増員するなど、ガバナンスを強化してきました。今後も継続的にガバナンスの強化・充実を図り、事業成長を加速してまいります。
ステークホルダーの皆さまへ

利益を伴う成長を継続し、2024年は4期連続で増配し、1株当たりの配当額は私が社長に就任する前の2020年と比較して2.3倍となりました。連結配当性向40%以上という方針のもと、2025年も増配を計画しています。株価は2023年、2024年、それぞれに上場来高値を更新し、評価の表れと励みに思う一方で、株主を含むステークホルダーの皆さまに期待し続けていただける成果創出と企業グループ創りにより一層まい進する決意を新たにしています。
お客さまと共により良い未来像を描き、その実現のためにお客さまがまだ気づいていない潜在的な課題やニーズを発見し、創造性に優れた提案により課題を解決していきます。そのような私たちキヤノンMJグループを象徴する表現として「未来マーケティング企業」を宣言しました。この「未来マーケティング企業」を表現した企業CMを2024年9月から展開しています。キャッチコピーは「超ワクワクする未来を実現する会社」です。カメラやプリンターなどのキヤノン製品事業やITソリューション事業で培った技術力をさらに発展させ、マーケティングの力と掛け合わせることで未来の社会課題を解決していく。これまで以上に新しいテーマに積極的にチャレンジし、ステークホルダーの皆さまにワクワクしていただける、希望や喜びに満ちた未来を創るための企業活動を行ってまいります。ぜひ当社グループにご期待ください。
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本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。