社内取締役・社外取締役の対談
企業価値向上に向けた資本効率のさらなる改善、将来を見据えた成長投資の着実な実行に期待

大里取締役、宮原社外取締役が、当社グループの企業価値向上に向けた財務戦略、成長投資、ガバナンス、組織風土などについて対談を行いました。
エクイティスプレッドの拡大を目指す
宮原:私は、2025年3月に当社の社外取締役に就任しました。これまで公認会計士として監査法人で培った経験・知見を生かし、当社グループの企業価値向上に貢献できるよう、情熱を持って取り組んでいきたいと思います。
投資家の皆さまは、投資先を分析する際に企業価値向上へ資本効率を高める取り組みを実施している企業かどうか、非常に高い関心を持たれていると思います。当社グループは資本効率の改善に向けて積極的に取り組んでおり、2024年のROEは前期より0.9ポイント改善し9.6%となりました。2025年の目標として掲げているROEは10%と達成間近ですが、ITソリューション業界においては高い水準とは言えず、通過点として捉えています。
大里:2024年は、4期連続の増収増益となり、過去最高益を更新し、「2021-2025 長期経営構想」の当初計画を1年前倒しで達成することができました。バランスシートについては、資本効率の向上に向けて、当社株式を2024年7月に親会社等から約2,000万株を取得し、消却いたしました。12月にも当社株式を政策保有株式として保有する企業から約75万株を自己株式として取得いたしました。その結果EPS、ROEともに改善し、資本収益性を高めることができました。今後も資本効率のさらなる改善を図り、ROEを向上させ、資本コストの低減に取り組むことで、エクイティスプレッドの拡大に注力していきます。当社グループは財務目標として売上高、営業利益、ROEを掲げていますが、投資家の皆さまとの対話の中で、M&Aにより生じたのれんや無形資産の償却費が増えていることを踏まえ、実力を示す値としてEBITDAの導入についてご提言いただくことがありました。外部から当社グループがどのように見えているのか、どのような経営指標の開示が資本コストの低減につながるかなど、宮原さんにもアドバイスをいただきながら財務戦略を推進していきたいと考えています。
宮原:自己株式を消却したことは、流通株式比率の向上にもつながりましたね。資本市場の状況も注視しつつ、当社グループの財務戦略の方向性や決算の内容を、偏りなく、客観的に評価し、提言していきたいと思います。
短期・中長期両方の視点で成長投資を着実に実行
宮原:当社グループは、キヤノンという強力なブランド力と、 高い技術力を生かした製品を独占的に扱うことができる強みをベースとして、新たな価値の創造に取り組んでいます。各事業については、キヤノン製品事業は、オフィスのペーパーレス化が進む中で大きく成長させることは難しいと思いますが、継続して一定の需要はありますので、安定した収益を獲得できる事業と認識しています。一方、ITソリューション事業は、あらゆる企業が課題解決のためにDXへの取り組みを推進していることから、当社グループのオポチュニティーは広がっており、お客さまの満足度を高めるサービスを提供し、売上拡大と同時に利益率が向上することを期待しています。
大里:キヤノン製品事業はリカーリングビジネスの比率が高く、一定の利益を生み出すビジネスモデルであり、当社グループの強固な基盤となっています。宮原さんがおっしゃる通り、オフィスのペーパーレス化が進みドキュメントボリュームは減少しているものの、保守や消耗品ビジネスは堅調に推移し、かつ高い利益率を確保しています。このキヤノン製品事業で獲得した利益をITソリューション事業にしっかり投資し、事業を拡大していくタイミングと考えています。現在はキヤノン製品事業に比べてITソリューション事業の利益率が低い水準となっていますが、個別システム開発案件への対応を着実に行うとともに、システムのサービス化を進め、保守・運用サービス/アウトソーシングの領域を強化し、ストックビジネスを伸ばすことにより、利益率を高めていきたいと考えています。
宮原:2025年までに2,000億円以上の成長投資を打ち出し、2024年までに約70%を実行しています。事業投資においては、M&A・出資によるシナジーの発揮を期待するとともに、2024年からスタートした100億円規模のCVCファンド「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」の取り組みに注目しており、将来の大きな成果につながるビジネスが出てくることを期待しています。
大里:CVCファンドによる投資は、5年後、10年後に果実を得るための取り組みです。お客さまのDX支援サービスやクラウドサービスの中核拠点としてきたデータセンターへの投資も、2010年にスタートしており、成果が出るまでには長い時間を要しました。短期間で立ち上げて短期的な収益の獲得を目指すビジネスと、中長期目線で時間をかけて取り組むビジネスのバランスをとって成長投資を行い、そして、サービス型事業モデルを強化することにより、持続的な収益拡大に向けた基盤を固めていきたいと考えています。
宮原:当社グループは、毎年約400億円規模の営業キャッシュフローを獲得しており、資金は潤沢です。これを貯め込むことなく、将来に向けた成長投資を着実に実行していくことが重要であり、私はその進捗をチェックするとともに、ファイナンス面からさまざまな提言を行っていきたいと考えています。

独立した立場から適切な提言を行い、議論を深める
宮原:私は、当社が上場子会社であることを踏まえ、第一に少数株主の代弁者であるべきと考えています。その観点からも当社グループの取り組みを注視し、日ごろから経営に対する意見を述べることに加えて、特別委員会での議論を深めていきます。
大里:キヤノンと当社は製造と販売を分離しており、役割が明確にわかれています。そして、当社はキヤノンから制約を受けることなく独自に事業を伸ばし、業績は向上し、配当は現在の長期経営構想が始まる前の2020年から2.3倍としています。昨年の特別委員会では、自己株式の取得・消却が最も大きなテーマでした。親会社が保有している当社の株式を取得する目的の合理性や取引条件の妥当性等について、議論していただきました。引き続き、社外取締役の皆さまには、経営の透明性が担保されるように監督していただきたいと思います。
宮原:持続的な成長に資する健全な、より風通しの良い組織風土を醸成することも期待しています。経営層が社員に発信するメッセージは、社員のモチベーションや生産性に大きく影響します。社員が挑戦できる環境を整え、働きがいが感じられる風土づくりに継続して取り組んでほしいと思います。
大里:社長の足立が先頭に立ち、「ワクワクする未来を実現する会社にしていこう、失敗を恐れずにとことん挑戦してほしい」と社員に伝えています。実際に、社員は隔たりなく、さまざまなステージで挑戦するチャンスがあり、多くの社員が自主性を持って積極的に取り組んでいます。また、私からは、「一人ひとりが自身のやるべきことを認識し、ワンランク上の目標をやり遂げることで達成感を実感してほしい」と伝えています。
宮原:組織のDE&Iへの取り組みにおいても、私のこれまでの経験を生かして、女性活躍推進のスピードアップに貢献したいと思います。女性管理職比率は高まっていますが、2024年末時点に当社グループ全体で6.5%であり、さらなる改善が必要です。当社グループの持続的な成長に向けて、情報収集を通じて大きく変化する事業環境を的確に捉え、社内の常識やしがらみにとらわれず、独立した立場から、経営陣のリスクテイクを判断し、適切な提言を行っていきたいと思います。
-
※
本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。