社内取締役・社外取締役の対談
エクセレントカンパニーを目指し、5年後、10年後を見据えた経営を推進

足立代表取締役社長、大澤社外取締役が、ガバナンスへの取り組み、パーパスの体現、事業展開、人材の獲得・育成について対談を行いました。
経営の透明性向上へ、ガバナンス体制をさらに強化
大澤:2024年は、これまでガバナンス強化に向けて議論していたことが結果として表れ、ガバナンス体制はさらに強固になりました。取締役においては、独立社外取締役の比率は40%でしたが、資本政策に関する議論をさらに深めるため、2025年3月に企業会計に深い知見を持つ宮原さつき氏が加わり、社外取締役比率は50%に、女性社外取締役は2名となりました。
また、2024年1月に、取締役会の諮問機関として特別委員会を設置しました。当社は上場子会社であり、少数株主保護の観点から、支配株主と少数株主との利益相反がないか懸念を持たれないように、経営の透明性を示していくことが重要です。
足立:私が2021年に社長に就任して以来、取締役会や役員合宿で社外取締役の皆さまからご指摘、アドバイスをいただきながら深い議論を重ねてきたことが成果となったと感じています。新たに設置した特別委員会では、自己株式の公開買付けに関する議論のほか、親会社であるキヤノンから仕入れている金額の妥当性、取引のプロセスについて確認いただきました。
今後も引き続き、少数株主の視点や、社外取締役、監査役の多様な視点からのご意見を受け止めながら、ガバナンス強化に向けた議論を深めていきます。当社グループは、キヤノン製品事業に加えてITソリューション事業の成長を目指しており、親子の良好な関係性を維持しながら、当社の独自性を大事にしていきたいと考えています。
大澤:上場子会社であるメリットとして、キヤノンというグローバルな強いブランド力、高い技術に裏付けられた高品質な製品を独占的に扱えることに加え、キヤノンの製品と当社のITソリューションを掛け合わせたサービスを提供できることが挙げられます。一方で、当社が親会社からの制約を受けることなく、独自性を持って、1970年代からITソリューション分野におけるM&Aを進めてきたからこそ、今の姿があります。引き続き、独自性を持って経営していくことが重要ですね。今後の検討課題としては、将来の成長を見据えた上で機関設計について議論していきたいと考えています。当社は監査役設置会社で監査役が5名おり機能していますが、現状がベストなのか、近年導入する企業が増えている監査等委員会設置会社へ移行した方が良いのかどうかも含め、議論を始める必要があると思います。
グループ社員全員がパーパスの実現に向かって進んでいることが重要
足立:パーパスの制定にあたっては2021年に議論を始め、2023年4月にグループ内に公表し、その後、2024年1月に社外へ公表するというプロセスを経ました。社外に公表した際に、具体的にどのようなことか聞かれた時に社員が答えられるようにしたいと考え、社員に認知・浸透させ、自分事化してもらう期間を設けました。
社外に公表して1年となりますが、パーパスの体現に向かって進んでいることが重要です。当社グループが“未来マーケティング企業”としてステークホルダーの皆さまがワクワクする、喜び溢れる社会に向けてどのように貢献するか、持続的成長に向け社会課題を解決し続けるために、いかに利益を生む事業を創出していくかを突き詰めていきたいと思います。
大澤:パーパスを社内に浸透させ、社員が腹落ちしてから社外に公表するプロセスは、慎重に練られた施策であり、高く評価しています。パーパスのもと、全てのステークホルダーの皆さまと共に、当社グループ全体が一つのチームとして同じベクトルを持って事業を進めることができます。加えて、パーパスの体現がさらに進み、グループ社員全員が社会のため、人のために貢献していることを認識・理解することで、働きがいが一層高まることを期待しています。
顧客基盤のさらなる強化、新たな領域の拡大への取り組みに期待
大澤:当社グループは、ITソリューション事業におけるサービス型事業モデルへの変革に向けてM&Aを積極的に進めており、さらなる成果に期待しています。また、当社グループの顧客基盤を見ると特に大手企業に対する強さがありますが、準大手・中堅企業に対しては開拓の余地がありますね。
足立:当社ではお客さまの規模により、BtoBビジネスでは大手企業、準大手・中堅企業、中小企業の三つに区分していますが、ご指摘の通り、大手企業と中小企業に強い一方、準大手・中堅企業のうち300名~1,000名規模で強い関係性を持つお客さまはまだまだ少ないのが現状です。2021年にGBソリューション事業部を発足してアプローチを強化していますが、よりサービス型のソリューションビジネスに変えていく必要があると考えています。
大澤:次の新たな領域の拡大に向けては、最先端の技術やビジネスアイデアを持つスタートアップとのオープンイノベーションを加速することを目指す「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」の取り組みにも注目しています。また私は、災害発生時の停電に対するレジリエンスを高める分散型電源の普及に向けて、米国のLightergy社と連携した蓄電池システム事業の展開を楽しみにしています。

エクセレントカンパニーを目指して
大澤:工場や設備を持たない当社にとっての財産は人であり、日本の人口が減少する中、人材の獲得・育成はますます重要になります。採用活動や社員のリスキリングへの投資は5年後、10年後に結果が出てきますので、今から先を見据えて、教育システムや人が育つ環境づくりを強化していく必要がありますね。
足立:人材の高度化に向けては、各事業において、自分たちの事業が5年後、10年後にどうありたいか、そのためにはどのスキルレベルの人材が何人必要かということを明確にした上で、必要な教育プランを策定しています。リスキリングにより今の延長線上で能力を伸ばすことはできますが、新しい世界をつくっていくことはできません。目指す姿からバックキャストして、将来に花開くように、必要な人材を採用し、教育していくことが重要です。サービス型事業の推進に向けて、2022年より、ITビジネスプランナーという職種での採用も行っています。
大澤:今後も当社が持続的に利益を伴って成長し、社員が誇りを持てる会社となるために、監督・助言していきたいと考えています。事業拡大に向けたM&Aやデータセンターへの投資、自己株式の取得などを実施していますが、資本効率をさらに高め、ROEを2桁にしなければエクセレントカンパニーとは言えません。当社は4期連続で増収増益を実現している一方、ROEが9.6%と2桁に達していないことが課題ですね。
新しいことへの取り組みにおいては、リスク管理も重要です。私は、リスクをコントロールできずに色々対応をしたにもかかわらず損失処理をした苦い経験があります。当社はガバナンスが強化され、監督機能が発揮されていますが、世の中の変化が一層激しくなる中、迅速なリスク対応で成果を最大化し、成長を続けることを期待しています。
足立:社員には、「期待される 愛される 魅力のある会社」「期待される 愛される 魅力のある人」になろうよとさまざまな場面で話しています。専門分野の異なる社外取締役4名から的確な監督・助言をいただきながら、ステークホルダーの皆さまと共にエクセレントカンパニーを目指します。
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本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。