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社内取締役・社外取締役の対談

グループの志を一つにし、人的資本の高度化をスピード感を持って推進

溝口取締役、河本社外取締役が、パーパスの体現、人的資本の高度化、女性活躍推進、ガバナンス強化について対談を行いました。

言語化したパーパスのもと、変革を進める

河本:当社グループの歴史を振り返ると、M&Aにより、さまざまな企業が当社グループに参画して事業を拡大してきました。その中で、2023年4月に社内、2024年1月に社外へ公表したパーパスは、当社グループの社員の気持ちをつなげ、一つにしていく上で大きな意味があります。ただ、グループ従業員意識調査の結果を見ると、より深い理解やパーパスの体現という意味ではまだ向上の余地があるようですので、引き続き、経営トップが情熱を持って粘り強く浸透させ、根付かせてほしいと思います。

溝口:グループ従業員意識調査を見ると、パーパスに共感し、仕事を通じた貢献実感を感じている社員が全体的には増えている一方、新しく加わったグループ会社や、お客さまとの直接的な接点が少ない一部の部門は相対的に低い状況です。
その中で体現者を増やすためには、社員一人ひとりが会社あるいは社会全体の中での自分の担当業務の意義を再認識、あるいはより深く理解し、また、担当業務の前後の工程をも自分事として捉えることが重要だと考えています。そして、全体最適の視点で関係者と多様な発想、視点や意見を交換し、お互いを尊重し合いながら、一緒になって新しいものを生み出していってほしいと考えています。

河本:グループ一丸となって、多様な考え方を提示し合いながら何がベストであるかを模索するのは会社の成長を目指す上で欠かせないことです。当社グループは、とても家族的で温かみのある会社であることは強みですが、仲間意識が強すぎることで内向きの思考になったり、従来のままで良いという空気になることもリスクとして懸念します。自分たちの原点を見直し、言語化したパーパスのもと、グループ全体で志を一つにして、ビジネスモデルの変革に向けて前進してほしいと思います。

客観的な評価を人材の高度化により一層生かす

溝口:当社グループは1970年代からITソリューション事業を手掛けており、物事を客観的に判断し、数値やデータに基づいて分析するといった考え方ができる人材の採用を、営業職含めて強化してきました。近年は、ITソリューション事業のみならず、産業機器のビジネスも拡大しており、技術を理解できる人材を育成するため、社員のスキルアップ体制の充実の必要性をあらためて認識しています。

河本:人材育成においてはITスキル向上の教育に注力していますが、社内だけでなく、外部でも評価される人材を育成することが大事です。人材の流動性を高めるとともに、社員には社内公募制度や社内FA制度、外部のビジネススクールやセミナーを活用してもらい、幅広い業務で成果を上げられる人材を増やしていきたいです。経営陣には、外部評価の観点も含めてこれらの施策の活用状況や効果を検証してほしいと思います。

溝口:河本さんのおっしゃる通り、外部の目線を取り入れることで、公平性や客観性をもった人事評価ができ、社員のモチベーション向上にもつながります。部長クラスに昇格する前には外部によるアセスメントを実施し、管理職人材としての能力や適性を客観的に評価した情報を参考にしています。また、管理職の選抜研修においては、外部の目線をより取り入れるように変えてきました。一例として、2024年は部長クラスを対象に、スタートアップの経営者と対話し、テーマをもらって解決策を考える形式で行いました。外部機関によるその研修のレビュー結果には、現場の評価と大きく異なる点が多くありました。現場の評価は低く、外部評価は高い項目に注目し、新しい気づきやアクションにつなげています。

河本:素晴らしい取り組みですね。自己評価だけではなく他者評価を含め、さまざまな視点からギャップを洗い出し、その分析から生まれる対話を継続することが大切だと思います。

女性の執行役員の誕生に期待

河本:私が以前在籍していた会社では、リーダーとして多くの女性社員が登用され、さまざまな職場でいきいきと活躍していました。社会課題が複雑化・高度化する中、持続的な成長の実現には、多様な視点を持って議論し、決断していくことが必要不可欠です。多様な視点は、取締役や執行役員から一般職まで、各階層において必要であり、その意味で、当社における女性活躍推進への取り組みは、より一層力を入れて推進してほしいと、常にお話しさせていただいています。女性管理職比率は高まってきているものの、まだ低いと感じています。女性が働きやすい環境の整備にも注力してほしいと思います。

溝口:河本さんにはいつもご指摘いただいており、これまでの考え方に捉われることなく、多様な視点や経験を持つ人々が意見を出し合うことで、より創造的で革新的なアイデアを生み出していく必要があります。その一環として女性活躍は不可欠と考えています。中でもビジネスをリードする指導的立場における女性の管理職比率を高めていく必要があると考えています。またキヤノンのDNAの一つである実力主義の考え方に基づけば、性別に関係なく活躍できる場を会社として整えるべきであり、女性活躍を阻害している事象をなくしていく責務があると認識しています。これを推進していく上では、登用する側の意識改革や行動変容はもちろん必要ですが、女性の意識も重要な要素であると考えています。そのため、女性を後押しし、前向きな意識醸成を図るためのセミナーや研修などを体系化した「Empowerment Program」も実施しています。当社グループの年代別の女性管理職比率は50代は4.7%であるのに対し、40代は9.3%と徐々に高まっているものの、現状、10%に満たない状況です。さまざまな施策を講じながら早期に管理職の女性を増やしていきたいと考えています。

河本:新卒採用に占める女性比率もまだ上げられる余地はあると思います。女性活躍の観点から言うと、女性の執行役員が誕生し、経営の意思決定に関わることを期待しています。

指名・報酬に関するプロセスの強化に向けて

河本:ガバナンスや開示については、透明性・客観性をさらに高められるように、株式市場から求められている事項を踏まえながら、当社が強い意志を持って率先して取り組まなければいけません。私を含め、社外取締役がメンバーになっている指名・報酬委員会での役員の選任プロセスにおける議論には、社外取締役もより深く関わっていく必要があると感じています。役員報酬体系については、中長期的なインセンティブとなる株式報酬の割合についての考え方や、評価として非財務指標を組み入れるなど、検討の余地があると考えています。
また、非財務指標の開示は、良い数値を見せるのが目的ではなく、現状を把握できる数値で分析し、できていないものがあればそれを乗り越えていく意志を示すことが大事です。当社の社外取締役に就任して2年経ちましたが、ステークホルダーの視点を忘れずに、不明な点や疑問に感じることがあれば説明を求め積極的に発言し、当社の企業価値向上に貢献できるようこれからも努めていきたいと思っています。

溝口:2025年に取締役会において女性を2名へと増加し、独立社外取締役を半数にするなど、取締役がダイバーシティの範を示していく必要があると考えています。今後も引き続き、社外取締役の皆さまの多様な視点からご提言いただきたいと思います。人的資本の強化に向けた各取り組みを、スピード感を持って推進していきます。

  • 本ページの内容は統合報告書発行当時の情報です。