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大江麻理子が聞く次代を拓くリーダーたち キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役 足立 正親氏 キャスター大江 麻理子氏

映像とAIで新たな価値
ITソリューションでさらなる飛躍

日本経済新聞の創刊150周年シリーズ企画「大江麻理子が聞く 次代を拓くリーダーたち」第7回は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の足立正親社長が登場。カメラや事務機の販売からはじまり領域を広げ、現在はIT(情報技術)ソリューション事業を成長の中核に据える。長年培ってきた技術と人材にAI(人工知能)を掛け合わせ、さらなる飛躍を目指す。足立社長が考える次代を拓く力とは、キヤノンMJが提供する価値とは――。

※著作・制作日本経済新聞社(2026年日本経済新聞 創刊150周年シリーズ企画)。
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顧客接点生かし事業を拡張

大江: キヤノンMJの沿革をお聞かせください。
足立: 創業は1968年で、今年で59年目になります。当初はキヤノン事務機販売という、事務機を専門に扱う会社でした。その3年後にキヤノン販売という社名になり、事務機とカメラをトータルで販売する会社になりました。
大江: キヤノン本体から販売部門が独立したという形ですか。
足立: おっしゃる通りです。親会社であるキヤノン株式会社が開発、生産、海外の販売を担当し、国内の販売は我々が担当するという位置付けでスタートしました。私が入社した1982年頃は「右手にカメラ、左手に事務機」がキャッチフレーズで、カメラのウェイトが半分ぐらいありました。
90年代からは「映像と情報のシステムインテグレーター」というキャッチフレーズを掲げ、2000年代に入ると、ネットワーク化・クラウド化を見越して、ソフトウエア開発やシステムインテグレーション(SI)の領域を広げていきました。
03年にはシステム会社をM&A(合併・買収)し、お客さまの課題を解決する会社へと変わっていきました。その実態に合わせて、06年に社名をキヤノンマーケティングジャパンに変更しました。マーケティングを通じてお客さまの課題を解決していくという、事業の実態を反映した社名にしたのです。

キヤノンマーケティングジャパンのあゆみ

図:キヤノンマーケティングジャパンのあゆみ
大江: キヤノングループ全体の中では、現在どのような位置付けになるのでしょうか。
足立: キヤノングループには、米州、欧州、アジア、そして日本という4つの統括販売会社があり、我々は日本市場を担当しています。国内市場は成熟しており、カメラや複合機といった主力製品の市場成長率は限定的です。そこで我々は、成長領域であるITソリューション事業に注力しています。
ITソリューションの提案はキヤノン製品の販売にもつながりますし、何より私たちは販売の最前線にいます。お客さまの生の声を親会社であるキヤノンにフィードバックし、商品開発やサービス改善につなげることも重要な役割です。

パーパスは「北極星」 長年の知見つなぐ

大江: 24年にパーパスを制定しましたが、その背景について教えていただけますか。
足立: 当社グループはM&Aなどを通じて多くの企業が仲間入りし、事業も人材も多様性が高まりました。これは強みでもありますが一方でグループ全体がどこに向かうのか、方向性を明確に示す「北極星」のような存在が必要だと感じました。お客さまやビジネスパートナー、そしてグループ社員に対して、我々が進むべき先を示すためにパーパスを制定したのです。
大江: 「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」というパーパスにはどのような思いを込めたのでしょうか。
足立: 中長期の事業目標とも異なり30年、40年先を見据えています。焦点を絞りすぎず、グループの誰もが同じ方向を向けるようにしたかったのです。ここで言う「想い」とは社会やお客さま、社員一人ひとりが実現したい未来への願いや志であり、「技術」とは、単なるICT(情報通信技術)だけでなく、長年培ってきた知見やノウハウまで含んでいます。
大江: そのパーパスのもと、1月には「2026-2030 長期経営構想」を発表されました。
足立: はい、この構想のテーマは「さらなる飛躍へ」です。16年から20年にかけて事業の選択と集中を進め、筋肉質な体質になりました。続く21年から25年は、ITソリューション事業を中核として成長を加速させ、長期経営構想を1年前倒しで達成できました。これからの5年間はサービス型事業をさらに拡大し、社会課題の解決を通じて新たな事業を創出し続ける「事業創造企業グループ」へと進化することで、さらなる飛躍を目指します。
大江: 社会課題の解決という点では、「7つのマテリアリティ」も設定されていますね。
足立: 我々を取り巻くステークホルダーとキヤノンMJグループにとって重要性の高い注力すべきテーマを7つに整理しました。地球環境や人権問題など「ネガティブな影響の最小化」を目指すもの、そして安心・安全な社会の実現など「ポジティブな影響の最大化」を目指すもの、これらを支えるガバナンスなどの「経営基盤」という3つの視点で設定しています。このマテリアリティー(重要課題)への取り組みを通じて、パーパスの実現を目指していきます。

パーパス実現を支える「7つのマテリアリティ」

図:7つのマテリアリティ表

サイバーとフィジカル、両面から安心・安全を届ける

大江: マテリアリティーを起点とする事業の中で、特に注力している分野は何ですか。
足立: いくつか重点領域がありますが、その中でも特にご紹介したいのが2つあります。一つは、我々の強みである映像技術にAIを組み合わせた「映像×AIソリューション」です。2040年にかけて労働人口の大幅な減少が予測される中、業務の効率化や省力化は喫緊の課題です。キヤノンが長年培ってきた映像技術と、現場で蓄積してきたデータ、そしてAIを組み合わせることで、防犯・防災はもちろん、工場の自動点検など、お客さまの業務変革につながる価値を提供しています。
フォト:設備異常の通知から原因分析、対応方法の提示までを支援する映像×AIソリューション

設備異常の通知から原因分析、対応方法の提示までを支援する映像×AIソリューション。
AIとの対話を通じ、現場の業務効率化を実現する。

足立: もう一つは「セキュリティー」です。サイバー攻撃が日常的に報じられる中、安心・安全な社会の実現は非常に重要なテーマです。我々は、ITを守るサイバーセキュリティーと、監視カメラなどを活用して物理的な安全を守るフィジカルセキュリティーの両方の領域でソリューションを展開しています。特にIT専任者の確保が難しい中小企業のお客さまには、リスク分析やコンサルティングから、システムの導入、運用・保守まで一気通貫で支援し、負担軽減につなげています。
大江: サイバーとフィジカルの両方を手がけることは、企業の強みになると言われますね。
足立: 実感しています。例えば、サイバー攻撃が発生した際に、カメラの映像と連携させることで、何が起きたかだけでなく、誰が関与したかまで特定できる可能性があります。サイバーだけでは見えにくい部分の検証や分析がフィジカルとの連携によりスピーディーに行えるようになります。
フォト:映像解析とAIを活用した自動点検のデモンストレーション

映像解析とAIを活用した自動点検のデモンストレーションを体験する大江さん。
制御盤の数値や針の位置を画像解析し、カメラが設備の異常を検知。遠隔での監視や点検の効率化、省人化を支援する。

厚みのある人材 競争力の源泉に

大江: キヤノンMJグループならではの強みはどこにあるとお考えですか。
足立: 3点あると考えています。1つ目は最も重要である「人材」です。非常に優秀で厚みのある人材が豊富にいることが、我々の競争力の源泉です。2つ目は、カメラから半導体関連装置まで扱う中で培われた、映像技術を核とする「技術力」。なかでも、グループ全体で約1万8000人の社員のうち、約4800人がシステムエンジニア(SE)であるように、システム開発・構築力も大きな強みです。そして3つ目が日本を代表する企業から個人のお客さままでをカバーする、幅広く奥深い「顧客基盤」です。
大江: その人材、次代を拓く力を生むための組織づくりについて、どのような取り組みをされていますか。
フォト:キャスター 大江 麻理子氏

キャスター大江 麻理子氏

2001年フェリス女学院大学文学部卒、テレビ東京入社。13年ニューヨーク支局赴任。14年から「WBS(ワールドビジネスサテライト)」メインキャスター。25年6月テレビ東京退社。福岡県出身

足立: 社員には「とにかく挑戦を」と言い続けています。入社式では「失敗してください」と極端に伝えています。もちろん、無理に失敗する必要はありませんが、失敗を恐れずに一歩踏み出してほしいというメッセージです。「成功は人を成長させるが、失敗は人を強くする」ということを、全社員に繰り返し伝えています。
大江: 心理的安全性が確保されていると、チャレンジする気持ちも変わってきますね。
足立: まさに、失敗しても大丈夫だという安心感が挑戦する文化を育むと考えています。若手の失敗を見守り、導くことでマネージメント層のコーチングの力もついてきます。
こうした人材の高度化がより良い提案につながり、顧客満足度を高めます。お客さまから「ありがとう」と言われることが社員の働きがいとなり、さらなる自己成長への意欲につながる。この「エンゲージメント向上ループ」を回すことで、個人と会社が共に成長していく。これこそが我々の目指す姿です。
図:持続的な企業価値の向上

時代の変化に自らしなやかに対応

大江: キヤノンMJは社会の公器として、どのような役割を果たしていきたいと考えていますか。
足立: 我々は、事業を通じて社会やお客さまの課題に向き合い、その解決を通じて価値を提供し続ける存在でありたいと考えています。コロナ禍で働き方が大きく変わった時も、我々は単にキヤノン製品を売るだけではなく、テレワーク環境に対応した文書管理や情報共有の仕組み、業務プロセスの変革を提案してきました。世の中が変化する時に、いかにしなやかに自らを変え、社会に求められる価値を提供できるかが重要です。
パーパスである「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」のもと、我々の人材と技術を生かし、社会課題解決に向けて事業を通じた価値提供を実現していくこと。これこそが社会の公器としての役割を果たすことだと考えています。
フォト:キヤノンマーケティングジャパン社長 足立 正親氏

足立正親 キヤノンマーケティングジャパン社長

1982年学習院大学経済学部卒、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)入社。
2013年上席執行役員、15年取締役兼常務執行役員、19年取締役兼専務執行役員を経て、21年代表取締役社長兼社長執行役員に就任、現職。神奈川県出身

大江: 持続的に価値を提供していくために、ステークホルダーとの共創を今後どのように発展させていきますか。
足立: お客さまとともにより良い未来を描き、その実現に向けて課題を解決していくことを目指しています。お客さまが抱える顕在的な課題はもちろん、将来起こり得る課題や本質的な課題にも目を向け、解決策を提案し続けていきたい。ただ、社会課題の解決は我々だけでは成し遂げられません。お客さまやビジネスパートナーとの共創や協業がますます重要になります。我々が掲げる「超ワクワクする未来を実現する会社」の実現に向け、皆様とともにより良い未来をつくっていきたいと思います。
フォト:大江 麻理子

取材後記

「社会の見守り隊」を役割に

世界における日本企業の強みは、「デジタル技術」と「ものづくりの技術」の両面を持っていることだと言われます。デジタル技術を現実世界で活用するには、そのための製品が欠かせません。ものづくり王国日本には、その点で一日の長があるというわけです。キヤノンMJは、そのサイバーとフィジカルの結節点ともいえるサービスを提供しています。一例として、工場で機械トラブルが起きた際に遠隔でも把握できるシステムを体験しました。キヤノンがカメラや複合機で培ってきた映像認識技術や、蓄積してきた映像解析データを使い、トラブルを見逃さないようにするものでした。製品とITを掛け合わせ、「人手不足対策、トラブルへの迅速な対応、安心安全を守る」などの顧客が抱える課題を解決しているのです。顧客を通して「社会の見守り隊」になることが、キヤノンMJの社会の公器としての役割なのだと感じました。

今回の取材動画はこちらからご覧いただけます

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