顧客と共に「正解」を探る。製造業の経営判断を支える、原価管理のスペシャリストの情熱
2026年6月17日
経営判断の羅針盤となる「管理会計」。その要であり、製造業の競争力を左右するのが「原価管理」だ。品目ごとの製造コストを正確に把握することは、高利益体質な企業経営には不可欠だが、理想的な運用を実現している企業は必ずしも多くないのが現状だろう。
その「理想と現実」の溝を埋めるため、現場のデータ収集から経営層への提言まで、一気通貫で伴走するコンサルタントがいる。キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)で、製造業向け原価管理システム「mcframe(エムシーフレーム)※」のコンサルタントとして活躍する中村 美智穂だ。
単なるシステムの提供にとどまらず、顧客の悩みに寄り添い、共に考えることで「その企業にとっての正解」を導き出すコンサルティングに情熱を注ぐ中村。管理会計領域の専門性と、多くの現場経験で培ったコミュニケーション力が評価され、2025年には「キヤノンITS認定スペシャリスト」にも認定された。プロフェッショナルとして顧客・ベンダーの双方から厚い信頼を寄せられる中村の、キャリアと情熱の源泉に迫る。
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mcframe:ビジネスエンジニアリング株式会社が提供する製造業向けITソリューション。キヤノンITSはmcframeの導入事例数において国内トップクラスの実績を持つ
理想の原価管理には、現場からの正しいデータ収集が不可欠
企業会計には大きく分けて、社外に報告するための「財務会計」と、社内での意思決定に用いる「管理会計」の二つがある。特に製造業においては、管理会計の中でも「原価管理」が非常に重視される。
「自社の収益構造はもちろん、原価を正確に把握できなければ、正しい価格設定や、どの製品をどの製造所で作るべきかなどの適切な経営判断が下せません。会社全体で黒字であっても、品目ごとに詳細に見ていくと、実は特定の品目では採算が取れていないといった実態が見えてくることもあります」と中村は語る。
しかし、理想的な原価管理を実現するのは簡単ではない。原価計算の元となるさまざまなデータを現場から正確に収集する必要があるからだ。
「『材料をいくらで買い、どの製品にどれだけ投入したか』『作業時間はどれくらいかかったか』といった膨大な情報を集約して初めて、経営判断に資する正確な原価を算出できます。いくら計算や分析のシステムを整えても、現場からの正しいインプットがなければ、精緻な原価管理は叶いません」
こうした課題解決に貢献するのが、キヤノンITSが導入支援を行っている生産管理・販売管理・原価管理パッケージソリューション「mcframe」と、その豊富な標準機能を生かして原価管理ソリューションの短期導入を推進し、提案から運用までを一貫して支える中村たちコンサルタントだ。
mcframeは、他のシステムなどから取得したデータを基に原価を計算・分析し、経営判断に生かすためのプラットフォーム。品目別の原価計算はもちろんのこと、受注単位やロット単位などさまざまな切り口で原価を把握でき、予実管理や限界利益の算出も可能にする。
「もちろんシステムを導入するだけで課題が解決するわけではありません。横断的なコストをどのように各品目へ配賦(按分)するかといった細かなルールをお客さまとすり合わせて設定し、mcframeに落とし込むことも、会計とシステム、両方の知識を備えた私たちの重要な役割。そして前述のとおり、何より重要なのが現場からのインプットです」
日々の業務に追われる生産現場において「原価計算に関するデータ入力」は生産性との関連が見えづらく、優先度の低い面倒な業務ととられがちだ。そこで中村たちは、単なるシステム導入支援にとどまらず、現場とのコミュニケーションを重ね、よりよいデータ収集の仕組みをつくるところから尽力する。
「『しっかりデータを入力してください』と言うだけでは人は動いてくれません。入力の自動化などをご提案するケースもありますが、どんな現場でも、その作業がコスト削減、ひいては利益につながることを理解し、納得していただくことが重要です。そのために、根気強く現場の方と対話を重ねます。時には厳しい顔もしつつ(笑)、現場に入り込み、理解を深めながら一緒に仕組みをつくっていくのです」
そうしてつくり上げた正確なデータ収集の仕組みと、経営層の意思決定をサポートするためのデータ分析。この両輪を回し、何度も改善を重ねることで少しずつ「理想の原価管理」へ近づけていき、それによって顧客を高利益な企業体質へと導いていく――それが中村たちの使命なのだ。
会計を一から学び、「自分の言葉で語れる」コンサルタントに
現在は管理会計システムのスペシャリストとして活躍する中村だが、実は学生時代に会計を学んだことはなく、キャリアの出発点は「漠然としたITへの興味」だったという。
まだプログラミングを学ぶことが一般的ではなかった時代に大学でITを学び、卒業後は当時の住友金属システム開発(キヤノンITSの前身)に入社。最初に配属されたのは、親会社である住友金属工業の研究開発部門・数理技術室で、過剰在庫や欠品を防ぐことを目的とした需要予測や生産・物流シミュレーションに関する開発業務に従事した。
キャリアの大きな転機となったのは、10年目。グローバルERP(統合基幹業務システム)として知られる「SAP」の管理会計領域のコンサルタントとなったのだ。社内向けシステムの技術者から、顧客と直接やり取りするコンサルタントへの転身は、当時の中村にとって大きな挑戦だった。
「コンサルタントはお客さまにさまざまな提案をし、共に課題解決をめざすのが仕事ですが、私は話すことが得意な方ではなかったので、最初はコミュニケーション面で苦労しました。会計も一から勉強して、本当に大変でした(笑)」
しかし数々のプロジェクトを通して、顧客やベンダーと一つの目標に向かう経験を積み重ねるうちに、確固たる自信が芽生えていった。
「当初はシステムの説明をするだけで精一杯でしたが、一つのプロジェクトの上流から下流まで一気通貫で携わることで、会計に対する理解も深まり、少しずつ自分の言葉で提案ができるようになりました。私はもともと、『自分が納得するまで調べ尽くさないと気が済まない』性分。新しいことにトライして、分からないことは徹底的に調べて自分の目で確かめ、自分なりの言葉に落とし込む。そのプロセスを繰り返してきたことが、今の成果につながっているように思います」
「自分の言葉で語れる」コンサルタントとなった中村は今や、顧客からもベンダーからも信頼される存在。「恐れ多いのですが」と前置きしつつ、中村はあるプロジェクトでのエピソードを語る。
「一度、お客さまから『中村さんって会計士でしたっけ?』と問われたことがありました。私は一システム担当でしかありませんが、『会計のプロフェッショナル』として頼っていただけたのだと思うと、身が引き締まるとともに、本当にうれしかったですね。しっかり知識を身につけてきてよかったと感じる経験でした」
顧客に寄り添い、顧客と共に考える姿勢で「正解」を探る
現在はその豊富な経験を頼られ、mcframeの導入プロジェクトにおける企画提案や上流工程のコンサルティング、プロジェクトマネジメントのほか、他のソリューションと組み合わせた複合的なプロジェクトにも参画している。活動の幅は広がっているが、顧客に向き合うときの姿勢は変わらない。
「お客さまの声に耳を傾け、困りごとや要望を正確に汲み取ることを心掛けています。特に、『○○すべき』という言葉を使わないこと。自分にとっての正解を押し付けず、お客さまに寄り添い、一緒に考えていく姿勢を大切にしています」
mcframeは非常に細かく設定できるシステムのため、「あれもこれもやりたい」と、顧客の要望も多くなりがちだという。しかし、その要望が、すべて課題解決という目的につながるとは限らない。
「細かくデータを見ようとするほど、運用コストや現場の負荷も上がってしまいます。現場の工数と得られる効果のバランスを考え、お客さまの『こうしたい』を尊重しながら、『より合理的なやり方』を一緒に探る。そうして本質的な正解へと着地させていくことは、難しいですがやりがいもありますね」
本質的な課題解決を担えるコンサルタント育成が、これからのミッション
長年にわたる管理会計領域での実績と、多数の案件への貢献が認められ、2025年、中村は「キヤノンITS認定スペシャリスト」に認定された。高度なITスキルを持つ社員に与えられ、部門からの推薦と厳しい審査を要する、一握りの社員だけが持つ肩書だ。中村は「最初は驚きましたが、次第に喜びの気持ちが湧いてきました。ここまで続けて来られたのは、ことあるごとに、お客さまから感謝の声をいただくことができたからこそだと思います」と振り返る。
そんな中村が目下、力を注いでいるのは人材育成だ。中村たちの手がけた成功事例をきっかけに新たな商談が増えており、原価管理領域のコンサルタント育成は急務となっている。
「mcframeの扱い方を勉強して使えるようになるだけでは、コンサルタントとしては不十分です。お客さまとの綿密なコミュニケーションを通して課題を抽出し、解決に導くためには、幅広い知識と経験が求められます。勉強会なども実施していますが、重要なのは現場経験を積むこと。最近は、商談や提案の場に若手メンバーを連れて行く機会が増えています。最初は聞いているだけでもいい。どんな話をするのかを知ったり、新たな言葉に触れて調べたりすることが、成長の第一歩になるはず。やがて自分の言葉で課題を定義でき、本質的な課題解決を担えるメンバーを増やすことが、これからの私のミッションだと思っています」
製造業を支え続ける中村の情熱は、次の世代にも受け継がれていく。

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