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八村塁主宰『BLACK SAMURAI』の裏で繰り広げられた、若手スポーツフォトグラファー「バスケ撮影キャンプ」の二日間

2026年9月18日

未来への種

アスリートが限界に挑み、数々のドラマが生まれるスポーツの現場。その一瞬を切り取り、写真を通じて感動を届けるのが、スポーツフォトグラファーです。

競技のルールや戦術、選手のクセを踏まえた展開の予測、そして一瞬の判断や高度な撮影技術が求められる、まさに職人技の世界。その力を磨くには、実際の現場で経験を重ねることが欠かせません。しかし、実は多くの若手がトップレベルの現場を経験する機会を十分に得られていないという課題があります。 

そこでキヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は2026年8月、プロバスケットボール選手の八村塁さんが主宰する『BLACK SAMURAI SUMMIT 2026』を舞台に、「若手フォトグラファー育成のためのバスケ撮影キャンプ(以下撮影キャンプ)」を実施しました。フォトグラファーと共にスポーツ写真文化を育む、未来に向けた取り組みを探ります。

「入り口」が狭い、スポーツフォトグラファーの世界

大会を主宰した八村塁選手(左)

『BLACK SAMURAI SUMMIT 2026』は、八村選手が選び抜いた将来有望な若いバスケットボール選手たちが、名古屋・IGアリーナという日本最大級の舞台で、世界基準の真剣勝負を体験するイベント。

この貴重な舞台で実施された二日間にわたる撮影キャンプでは、若手フォトグラファーたちが、第一線で活躍するプロフォトグラファーからスポーツ撮影を学び、キヤノンの機材に触れながら実際の試合撮影に挑みました。

まず、講師を務めたプロフォトグラファー・中西祐介さんに、スポーツフォトグラファー育成に対する想いを聞きました。

― 中西さんは、プロバスケットボールチームのオフィシャルフォトグラファーをはじめ、報道や広告など幅広い領域で活躍されています。スポーツフォトグラファーという仕事の難しさは、どんなところにあるのでしょうか。

中西:何より「入り口が狭い」という難しさがあります。特にプロスポーツやメジャースポーツは門戸が狭く、現場で撮影機会を得る難易度が高い。たとえ現場に入れたとしても、継続的な仕事が保証されているわけではありませんから、一回一回が勝負になります。

一方、成果を出すためには経験が欠かせません。競技ごとのルールや特性を理解し、望遠レンズの狭い画角の中で、素早く動く選手やボールを追う。現場に入ればすぐに良い写真が撮れるわけではなく、何年もかけて経験を積み、技術を磨く必要があります。

撮影キャンプで参加者にアドバイスする中西さん

― 今回、講師を引き受けた理由を教えてください。

中西:カメラメーカーが若手フォトグラファーの成長機会を提供する試みは、とても意義あるものだと思いました。先ほど述べたように、プロスポーツの撮影は、経験を積む機会そのものが限られています。私自身いまがあるのは、若い頃、先輩に教えていただいたことはもちろん、一人では行けない現場に同行させてもらったり、次のチャンスへと引き上げてもらったりしたからです。次世代にチャンスを渡し、未来につないでいくことも私たちの役割の一つ。そんな活動に貢献できるなら、ぜひ講師を引き受けたいと思いました。

この会を企画したキヤノンMJのプロサポートには、何度も助けてもらってきました。機材の故障など、現場で困ったときに相談したり支えてもらえたりする存在は、プロフォトグラファーにとって、とても大きなものです。今回参加する皆さんにも、「プロフォトグラファーを支える人たち」との関係性を、いまから深めてほしいと思っています。

トッププロが立つ現場の緊張感を経験してほしい。撮影キャンプに込めた想い

参加者にプログラム内容を説明するキヤノンMJ「CPS」メンバーたち。一番右が柿崎、一番左が三浦

では、キヤノンMJは、どのような想いからこの企画を立ち上げたのでしょうか。企画・実施を担当するプロフェッショナルカメラマーケティング部の柿崎利樹と三浦歩に、その背景を聞きました。

― キヤノンMJは普段、プロフォトグラファーの皆さんと、どのように関わっているのでしょうか。

三浦:プロフォトグラファー向けのサポート組織「CPS」を設け、日々の撮影業務を支えています。大きなスポーツ大会やイベントでは現地にサポートブースを設け、機材のメンテナンスなどを通じて、歴史に残る一瞬を撮影するフォトグラファーの皆さんを裏側でサポートしています。

そうした現場で、世界中の精鋭フォトグラファーの皆さんが、「二度と得られない一瞬」を逃さないために集中力を研ぎ澄まし、事前の準備を徹底して撮影に臨む姿を間近で見てきました。私たち自身も多くを学ばせていただいています。

― 今回の撮影キャンプを企画した経緯を教えてください。

柿崎:『BLACK SAMURAI』は、これから世界をめざす若い選手たちに世界基準の環境で真剣勝負を経験してもらい、NBAへ続く道を見せるという想いがあります。そこに、私たちが写真の世界でやりたいことと重なるものを感じました。これまでプロフォトグラファーの方々に見せていただいた、歴史的瞬間を捉える一枚にかける真剣勝負の世界を、次世代につなげたい。若いフォトグラファーがトップレベルの現場に触れ、「どうすればあの場所にたどり着けるのか」を考えるきっかけをつくりたいという想いから、今回の撮影キャンプを企画しました。

― この企画を、参加者にとってどのような機会にしたいと考えていますか。

柿崎:「育成」という言葉も使っていますが、数日で育てることができるほど簡単な世界ではありません。まずは第一線の現場に立ち、一瞬を逃せない現場ならではの“ひりつき”や、求められる動きや判断を存分に経験していただきたい。それが、プロのスポーツフォトグラファーをめざす一つのきっかけや分岐点になれば嬉しいです。そして、中西さんのような第一線のフォトグラファーはもちろん、同じ未来をめざす参加者同士の横のつながりもつくってほしいです。

三浦:私たちはカメラメーカーなので、製品をご提供することはもちろん大切ですが、それで終わりではありません。使う方がどんな想いで写真を撮っているのかを学び、実際に声を聞きながら、その先まで関わっていくことを大切にしています。今回も、機材を使っていただくだけではなく、撮影の経験や人との出会いまで含めて、若手の皆さんのこれからをサポートする機会にしたいと思っています。

いざ、スポーツ撮影の現場へ。若手フォトグラファーが挑んだ二日間

今回の撮影キャンプには、次世代を担うと期待され推薦を受けた9名の若手フォトグラファーが全国から集いました。現在写真を学んでいる学生から、すでにフリーランスとしてスポーツ撮影を手がける方まで、経歴はさまざまです。

キャンプ初日は座学が中心。まず「プロとしてスポーツ写真を撮る」ための撮影技術やマインドセットの講義が行われました。スポーツ撮影は「準備が9割、本番が1割」と説く中西さん。事前に競技や選手について調べ、会場を把握し、どこから何を狙うのかを考えておく。ポジションが決まってからできることには限りがあるからこそ、その前の準備がクオリティを左右するといいます。そして、プロとして仕事を続けるためには、技術以上に人とのつながりと信頼関係を築くことが大切であると、中西さんは語ります。

「たまたま生まれた縁を一つひとつ大切にしてください。この撮影キャンプで生まれる同世代との縁も、この先のフォトグラファー人生で必ず生きてきます」(中西さん)

続いてCPSメンバーが、撮影で使用する機材EOS R1やEOS R5 Mark IIについてレクチャー。参加者は実際に機材を触りながら、スポーツ撮影で活用できる機能や設定を学びます。EOS R1などのフラッグシップモデルや、プロ仕様の超望遠レンズを使用できるのは、若手フォトグラファーにとって貴重な機会。どんな撮影位置から、どんな写真を狙うかを考えながら、真剣に機材を選んでいきました。

中西さんの講義を受け、機材を選ぶ参加者たち

そして迎えた二日目は、いよいよ『BLACK SAMURAI』イベント本番。会場に多くのメディアやフォトグラファーが詰めかけ、前日とは異なる緊張した空気が流れる中、若手フォトグラファーたちはコート間際の最前線で撮影に挑みました。スポーツ撮影の現場では、競技の進行などにより撮影可能な場所やタイミングが変化することが多く、この日も予期せぬスケジュール変更が発生。しかし、限られた条件の中で、最善の一手を判断し素早く行動するという「現場でのリアルな立ち回り」を経験できたことこそ、この撮影キャンプならではの貴重な学びです。

中西さんも各参加者の撮影ポジションを回り、カメラの設定やシャッターを切るタイミングなど、実際のプレーを目の前にしながらアドバイスを行います。CPSメンバーも、機材に関する疑問に答えたり、緊張する参加者に声をかけたりと、「決定的瞬間」に挑む若手フォトグラファーたちを、きめ細かくサポートしました。

スポーツ撮影に挑む参加者たち

さまざまなメディアのフォトグラファーが集う現場の緊張感の中、試合に向き合う参加者たち。限られたスペースで同じ体勢を維持しての撮影、慣れない試合展開の中で狙う一枚を押さえる難しさなど、現場でしか得られない経験を重ねながらシャッターを切り続けました。

若手フォトグラファーがつかんだ「次の一歩」

試合後、参加者たちは数多く撮影したカットの中から、これぞという三枚をセレクトし、発表を行いました。プレーの迫力、選手の表情、会場全体の空気感など、撮影意図にもそれぞれの個性が表れます。

中西さんは講評の中で全員のクオリティの高さを称えるとともに、「写真だからこそ見える瞬間」を意識することが大切であると話しました。

「選手の視線、腕に力が入った瞬間、ボールが手を離れる直前の緊張感など。一瞬を切り取って伝えられることが、他にはない写真の強みです」(中西さん)

黒澤莉子さんの作品

講評後、二名の写真を優秀作品に選出。黒澤莉子さん、川井晴稀さんの写真が優秀賞に選ばれました。

「選手二人の表情、中央にボールがある一瞬を切り取れたのが本当に嬉しかったです。普段はプロレスを撮影しているのですが、今回バスケットボールという異なるスポーツの撮影を経験できたのは、とても貴重な体験でした」(黒澤さん)

「選手の競争心、ボールへの執着、この大会のチャンスにかける想いが捉えられています。赤と黒、ユニフォームの色の対比も素晴らしいです」(中西さん)

川井晴稀さんの作品

「観客、選手の意識が集中するシュートを、引きの構図で捉えることを狙いました。ボールが手を離れる一瞬を捉えた写真をセレクトしています。優秀作品に選んでいただけたのはうれしいですが、もっと成長して、上をめざしていきたいです」(川井さん)

「両選手の表情、腕の伸びや、その筋肉から緊張感が伝わり、背景に大会ロゴの赤が入っていることも目を引きます。自分の撮影意図をよく理解した作品だと感じました」(中西さん)

キヤノンMJより優秀作品の表彰を受ける黒澤莉子さん(中央)、川井晴稀さん(右)

「誰が選ばれてもおかしくなかった」と中西さん。これからも、今回のように積極的にチャレンジする姿勢を忘れないでほしいと語ります。参加者たちは、貴重な経験を得た達成感と、「もっと成長したい」という意欲を胸に、会場を後にしました。

 撮影キャンプのすべてのプログラムを終え、中西さんはこう振り返ります。 

「厳しい現場を経験することで、フォトグラファーとして、人としてのスキルが一気に底上げされることがあります。今回コートレベルに降り立ち、緊張感のある現場で撮影したことが、皆さんのステップアップに確実につながったのではないかと感じます」(中西さん)

また、企画した柿崎・三浦も、二日間で感じたことを、次のように話しました。

「状況に応じて臨機応変な対応が求められる中で、一瞬のチャンスを逃さず捉える。今回はまさに、スポーツの現場ならではの“ひりつき”を感じてもらえる機会になったと思います。『こんなことが起こりうる』『そのときはこう動こう』と、中西さんが都度、参加者たちに的確なアドバイスをしてくださいました。第一線のスポーツフォトグラファーの判断や立ち振る舞いを間近で学べた経験が、参加いただいた皆さんの今後のキャリア形成の一端になることを願っています」(柿崎)

「中西さんや参加者の皆さんと現場で話す機会を得て、『スポーツフォトグラファーはどんな想いで、何を大切に撮っているのか』をより間近で感じられたことが、私たちにとっても大きな学びでした。これからも次世代のフォトグラファーに向けて、このような機会を積極的につくっていきたいです」(三浦)

キヤノンMJは、2026年9~10月に愛知・名古屋で開催される『第20回アジア競技大会』にも協賛し、今回参加した若手フォトグラファーたちに、さらなるスポーツ撮影の機会を提供する予定です。単発の取り組みで終わらせず、今後も若手フォトグラファーが第一線を経験できる場をつくり続け、スポーツ写真文化の発展に貢献していきます。


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