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AIエージェントで変わる人の価値と組織。この“新たなAI”とどう向き合うのか?

2026年8月26日

株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

近年、「AIエージェント」の導入事例や関連ニュースを目にする機会が増えています。「これまでの生成AIと何が違うのか」「自分の仕事や組織にどのような影響があるのか」と、期待と不安が入り交じった心境のビジネスパーソンも少なくないでしょう。

そこで、ミライアングル編集部は、数多くの企業へのAI導入支援を手がける上田雄登さんにインタビュー。いま私たちは、どのような変化の前に立っているのか。次世代の労働力として注目されるAIエージェントの活用に向けたマインドセットや、これまで以上に重要になる“人ならではの価値”、そして組織の知を次世代へ継承するための役割など、AIが自律する時代に向き合うためのポイントを聞きました。

今回の識者:上田雄登さん
株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者。日本のAI研究の第一人者である東京大学の松尾豊教授の研究室を経て、松尾研究所にて実務に携わる。2023年、AIの導入支援およびコンサルティングなどを手がけるGenerativeXを共同創業。アカデミック、ビジネス両面のバックグラウンドに基づいた著書や講演の実績多数。    

 AIエージェントによって変わっていく組織のカタチ 

株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

—「AIエージェント」について、AIエージェントとは何なのか、また従来の生成AIと何が違うのか教えてください。

上田:AIエージェントとは、人が逐一指示を出さなくても、自律的にゴールにたどり着けるAIツールのことです。人から与えられた指示を基に、自律的に、そのタスクにおけるゴール地点を定め、さらに、どのような情報を集めるべきか、どのようなシステムと連携すべきか、どんなアウトプットをめざすのかといったプロセス設計までも自ら判断し、タスクを前に進めていくことができます。

一方、従来の生成AIは、人が出した一つの指示に対して一つの答えを出すことを基本動作とするAIツールです。そのため、人がその都度指示を出し、答えを得るという一問一答を繰り返しながらゴールへと向かいます。人が手順を決め、条件分岐をさせ、ゴール地点を判断するなどの必要があり、どうしても手間がかかります。

つまり大きな違いは、最終的なゴールへ自律的にたどり着けるのがAIエージェント、人の介在ありきでたどり着くのが従来の生成AI、という点にあるでしょう。

—AIエージェントの活用が進むと、人の働き方はもちろん、組織のあり方も変わりそうですね。

上田:そうですね。従来の組織はピラミッド型が一般的ですが、AIエージェントの活用が進んだ従業員約80名の弊社では、その構造は、ミドルレイヤー(中間層)が減少した「ひょうたん型」へと変化しています。AIエージェントを駆使しながら重要な意思決定を行うレイヤーと、現時点では人の方が得意な、資料作成などの細かい作業を担当するレイヤーの二極化ですね。

その傾向は、多くの従業員を抱える企業においても同様だと思います。日本の雇用環境や組織の特性上、見かけ上はピラミッド型に維持されていたとしても、実態として「AIツールを高度に使いこなす一部の人材が、成果の大半を生み出す」という、ひょうたん型化が進むのではないでしょうか。

—そのような実態を踏まえ、企業はどのようなアプローチで導入をはかるべきでしょうか。

上田:私が、クライアントの皆さんによく申し上げているのは、「すべての従業員が等しく、AIエージェントを使いこなしている状態」を目標にする必要はないということです。

全員が使える環境を整えることは素晴らしいことですが、全員が使いこなせている状態をめざそうとすると、どうしてもうまく使えない人のフォローに注力しがちになり、組織全体の歩みが停滞する恐れがあるからです。ですから、まずは使いこなせている人をさらに後押しし、その可能性をどんどん広げてもらうことこそが、AIエージェントの力を最大限に生かして組織全体の成果へつなげていく近道だと思います。

AIエージェントを使いこなすための意識とスキル

インタビューは、キヤノンマーケティングジャパンにおける生成AI活用を推進する社員が、現地およびオンラインで傍聴する公開取材形式で行われた
株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

—AIエージェントを使いこなすために、私たちが日々の業務で意識すべきことは何でしょうか。

上田:まずは、自分の最大出力を「自分+AIエージェント」の合計値で考えてみてください。私の場合、自分が作業している裏でAIツールも動いていないと、「いま、1人分の力(1馬力)しか出ていないな」とソワソワしてしまいます。

つまり、どれだけ集中して目の前のタスクに向き合っていても、動いているのが自分だけなら、最大出力に到達していない状態なのです。さまざまなAIツールを駆使し、常に1馬力以上の力を発揮し続ける。そんな意識を持つことが重要だと思います。

—その意識を具現化するためには、どのような力を磨くべきでしょうか。

上田:まず挙げられるのは、マルチタスク能力です。仮に、何らかの商談を進めるとしましょう。AIエージェントに、前回の商談などを文字起こししたドキュメント(これもAIツールで自動生成したもの)とともに必要な指示を出します。その処理が走っている間に、別のAIエージェントへ異なる指示を出します。

いわばオーケストラの指揮者のように、複数のAIツールを同時並行でコントロールしながら、より質の高いアウトプットをめざすのです。

—質の高いアウトプットを得るためには、ゴールを定義して正確に伝えるといった「プロンプトをうまく書ける力」が重要といった意見もあるようですね。

上田:そのような認識も変わりつつあると思います。従来の生成AIであれば、人がワークフローを一つずつ指示したり、条件やゴールなどを事細かにプロンプトに落とし込んだりする必要があるため、すべてのプロセスを言語化するという作業が発生します。

一方、AIエージェントは、人がゴールを的確にプロンプトとして言語化できなくても、大まかな目的や条件などを伝えるだけで、AIエージェント自らが考え、「具体的にどこをゴールとするのか」「どのようなプロセスをたどるべきか」を判断して進めてくれます。

また、どれだけうまくプロンプトを書いても、1回で求めるゴールにたどり着くことはほとんどありません。プロンプトによってアウトプットの質も違いますが、それでもやり直しが前提になるでしょう。そのため、プロンプトの作成そのものに必要以上の労力を割くのは本末転倒だと思います。

—では、人はどこに最も力を注ぐべきなのでしょうか。

上田:私の場合、アウトプットに違和感を覚えたら、どこに違和感があるのかをフィードバックすると同時に、方向性の異なるアウトプットを三つほど再提案してもらいます。さらに、必要に応じてそのやり取りを繰り返します。

そのため、次々と上がってくるいくつかのアウトプットをその都度レビューし、「どれがベストか」「どの方向性で進めるべきか」と、その良し悪しを評価・判断し続けなければなりません。手を動かす作業はAIがやってくれますが、人は「頭を使って判断を下すこと」に大きなエネルギーを費やすことになるはずです。

AIエージェント時代における、人ならではの価値

株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

—AIエージェント時代において、人の役割や価値はどこにあると考えますか。

上田:先ほどの「力を注ぐべきこと」にもつながりますが、やはり「良し悪しを評価・判断できる」ことが、人ならではの価値になると思います。

前提として、現状、キャリアからくる専門知識や過去のコミュニケーションから得た文脈など、脳内に蓄積されたナレッジ、いわゆる長期記憶は、AIより人の方が優れています。ですから私たちは、プロジェクトの背景や意図を踏まえ「何が求められているのか」「どこを気にするべきか」などを察することができます。

この理解があるからこそ、AIエージェントに対して的確なフィードバックを送り、そのアウトプットを正しく評価・判断することが可能になります。その判断こそが、最終的な成果を左右し、相手の思考や状況に合わせた工夫という付加価値の創出にもつながっていくはずです。

—主導権は人の側にあるわけですね。ただ、精度の高い判断を実践していくのは、簡単ではないように感じます。

上田:そこで鍵となるのが、経験豊富なベテラン層の存在です。彼らは、経験に基づいた審美眼や、過去の経緯などを踏まえた文脈理解(コンテキスト)といった豊富な知見を背景に、AIのアウトプットに対して「これはいい」とか「これはダメ」と、根拠をもって言うことができます。良し悪しを適切に評価・判断する力に長けているのです。実は弊社でも、まさにそうした理由から50〜60代くらいのメンバーが活躍しています。

—そうした知見を、組織の価値として次世代へ引き継いでいくためにはどうすればいいのでしょうか。

上田:経験豊富なベテラン層が、その知見を生かしてAIエージェントへ的確なフィードバックを繰り返すことで、組織のAIには、彼らの審美眼やコンテキストがどんどん蓄積されていきます。

その結果、若手はAIエージェントを介して、その蓄積された知見に触れながら実務をこなせるようになり、間接的に、長年の経験を持つベテラン層の視点や価値観を吸収していきます。このサイクルによって、人ならではの価値は次世代へと引き継がれていくのです。

AIエージェントが業務インフラになる時代を見据え、いま持つべき視点とは

株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

—サイバーセキュリティにまつわるリスクについては、どのように考えますか。

上田:多くの企業が、サイバーセキュリティの重要性を従業員に周知し、定期的に研修を実施していると思いますが、それでも数年に一度は世間を騒がすような事故が起こっています。どれだけ厳しくガイドラインやルールを定めても、人が介在する以上、事故の確率をゼロにはできません。

ですから、AIエージェント活用において最も注意すべきなのは、テクノロジーそのもののリスクではなく、AIに対する過度な依存や過信ではないでしょうか。AIツールがどれほど自律的に動く時代になろうとも、最終的な成果物を人が厳格にレビューし、検証するプロセスは何より不可欠だと思います。

—では、企業は、どのような心構えでAIエージェントと向き合うべきでしょうか。

上田:注意したいのは、厳しいガイドラインやルールをつくり込んでしまうと、たしかにリスクは減少するかもしれませんが、活用の幅を狭め、成果を出しづらい環境をつくってしまいかねないということです。もちろん一定のルールは整備するべきですが、大事なのは「事故が起こったとき、どう対処するか」を定めておくことだと思います。

さらに、AIツールの領域においては、一度導入すれば終わりではなく、常にアンテナを張って環境をアップデートし続けなければいけません。もし、検討から導入までに時間がかかってしまったら、そのAIツールは導入時点で時代遅れになっている可能性があります。指数関数的に進化する領域だからこそ、常に状況を把握し、スピーディーな判断をすることが求められます。

例えば、Excelをはじめとする表計算ソフトは、もはや業務インフラのような立ち位置にありますよね。いずれ、AIエージェントも同じような存在になるはずです。そのときになって「どう接すればいいの?」と言っていては、時代に取り残されてしまうでしょう。AIと人ならではの価値をリンクさせ、組織や個人の成果をどう最大化させていくのか。そんな視点を持って、いまからAIエージェントに向き合っていくことが重要だと思います。

インタビュー終了後は、取材傍聴者との交流も。話題は尽きない
株式会社GenerativeX 取締役 CAIO/共同創業者 上田 雄登さん

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