「人」の成長が、北海道の未来をつくる。一から採用基盤を築いた人事スペシャリストの情熱
2026年9月11日
地方にいながら首都圏の大手企業のシステム開発を一貫して担い、お客さまのビジネスを支える高品質なサービスを提供するとともに、社員が成長できる環境をつくる――。キヤノンマーケティングジャパンのグループ会社で、北海道と沖縄を拠点とするクオリサイトテクノロジーズ株式会社(以下、クオリサイトテクノロジーズ)は、独自の「ニアショアダイレクトモデル」で、高度なキャリアを描ける雇用を地方に生み出し続けています。
沖縄で創業した同社が北海道へ進出した当初は、知名度も採用実績も、大学とのつながりもなかったといいます。ゼロから地道に信頼を積み重ね、採用・育成基盤を築き上げてきたのが江川 貴代です。「北海道を元気にしたい」という想いを胸に、人財開発から地域の未来をつくる江川の情熱の源泉に迫ります。
「地元で働く」も「キャリア形成」も諦めない。独自のビジネスモデルで地方の課題に挑む
北海道や沖縄をはじめとする地方都市では、若者が大学進学を機に地域を離れ、地元では希望するキャリアを描けないために戻ってこないという深刻な課題を抱えています。人材流出によって地元産業の担い手が減り、事業が減って就職先の選択肢がさらに狭まるという負の循環が生じている状況です。
江川自身も北海道で生まれ育ち、高校卒業後に東京の大学へ進学した一人。大学卒業後は北海道へUターン就職したものの、首都圏へ出た同級生の多くが地元に戻ってこない現状を目の当たりにし、地方が抱える構造的な問題を肌で感じてきました。
「北海道にどれだけ愛着があっても、めざすキャリアや自己実現の場がなければ、就職の選択肢にするのは難しい。一度首都圏で働き始めると、人生の大きな転機がない限り、地元へ戻るきっかけをつくるのも簡単ではありません」
この課題に対し、事業を通じて正面から向き合っているのがクオリサイトテクノロジーズです。同社が展開する「ニアショアダイレクトモデル」は、首都圏のリーディングカンパニーと直接契約を結び、システム開発の上流工程から開発、保守運用までを自社で一貫して担う独自のビジネスモデル。従来の「地方=下請け」のイメージを覆し、自社のエンジニアを中心に最先端のシステム開発を行う、首都圏の大手SIerと肩を並べる高い技術力が強みです。
「人とテクノロジーで地方の未来を拓く」というミッションのもと、地方に質の高い雇用と成長機会を生み出す同社。その挑戦を「人」の側面から支えているのが、人財開発グループでグループマネージャーを務める江川です。採用から育成、広報活動までを統括し、自らも現場に立ち続けています。
知名度もつながりもゼロからのスタート。地道に築いた信頼と採用基盤
いまでこそエンジニアの採用・育成を行う人事のスペシャリストとして活躍する江川ですが、その原点は前職の医療法人での経験にあります。多岐にわたる業務を経験する中で「人の成長を支える仕事」にやりがいを覚えた江川。さらにクリニックの医療システム刷新プロジェクトを担当した際、パートナーとなったITベンダーのエンジニアが、知識のない自身に対しても親身に伴走し、ITで課題を解決していく姿に感動したといいます。
「『エンジニアってかっこいい』と思ったんです。仕事として面白そうだし、今後IT業界はより成長していくのだろうなと感じ、自分もそこに関わりたいと考えるようになりました」
「人事として人の成長を支えたい」「成長するIT業界に携わりたい」「北海道に貢献したい」――。三つの想いが重なる先にあったのが、当時(2015年)北海道拠点を開設したばかりのクオリサイトテクノロジーズでした。「地方経済に貢献する」という想いに共感したことが決め手となり、オープニングスタッフとして入社した江川ですが、当初、同社の北海道における知名度や採用実績、大学とのコネクションはまったくない状態。まさにゼロからのスタートでした。
「まずは存在を知ってもらうため、道内の大学や専門学校へご挨拶に伺い、関係をつくるところから始めました。説明会やイベントにできる限り顔を出し、顔と名前を覚えていただく。入社を決めてくれた学生の研究室に直接足を運び、教授に事業内容や育成体制を丁寧にお伝えして安心感を持っていただく。そうした積み重ねの中で信頼関係が生まれ、OB・OGが育ち、その姿を見た後輩たちが当社に興味を持ってくれる、という事例が少しずつ増えていきました」
積み重ねた努力が実を結び、現在では道内の主要大学で一定の認知を獲得。社員が母校の講義に登壇するなどの機会も生まれているといいます。
さらに江川は、採用活動の整備にも着手。当初は面接官の評価基準があいまいだったため、経営層とも議論を重ね、求める人物像を「成長意欲を持ち、それを行動に移せる人財」と定義しました。さらに面接官トレーニングを実施し、「学生のどこを見て評価するのか」「どんな面接をすれば学生から選んでもらえるのか」といった認識を、社内に共有していったのです。
「ターゲットと基準を明確にしたことで、求める人財へ確実にアプローチできるようになり、採用の質が飛躍的に高まりました。会社の実績も順調に拡大しており、会社自体の魅力や待遇が上がったことで、より高い意欲を持つ学生が志してくれるという、良い循環ができています」
「ぶれない」自社が好きだからこそ、仲間を増やして成長に貢献したい
採用を担当する上での強みは「自分自身が本当にこの会社を好きだからこそ、本気で学生に勧めることができること」だという江川。そんな想いで実績を上げてきた江川に、2022年、人財開発グループマネージャーへの就任打診が舞い込みます。自ら動くプレイヤーから、メンバーを通じて成果を最大化するマネージャーへ。しかし、その挑戦は「壁だらけだった」と江川は振り返ります。
「プレイヤーとして成果を出していた分、自分のやり方を押し付けてしまい、『なぜ伝わらないんだろう』と一人で抱え込んでしまった時期もありました」
試行錯誤の末に江川が行き着いたのが、メンバーに対して「自分の正解」を示すのではなく、まずは相手の考えや「どうありたいか」を丁寧に汲み取り、信じて任せること。そして自身は、誰よりも成果にコミットし、その背中を見せ続ける――。メンバーの成果とやる気を引き出すため、この姿勢を大切に、いまもマネージャーとして成長している最中です。
さらに、江川が自身のモチベーションを見つめ直す機会となったのが、2023年から参画した「NextVision」策定プロジェクトでした。このプロジェクトは経営陣や現場のキーパーソンと共に創業から約20年の歩みを振り返り、2035年に向けた長期経営計画を議論するというもの。その中で江川は、自身の「この会社が好き」という想いの理由を再認識しました。
「私の『好き』のベースは、『ぶれないこと』だと気づきました。当社はお客さまの信頼を得て、直接契約を結んでいただく独自のビジネスモデルを構築してきましたが、それはお客さまに真摯に向き合い、頑張ることをぶれずに続けてきた結果です。
『地方に貢献する』という軸も徹底しています。『ニアショアダイレクトモデル』と打ち出している通り、私たちの役割は『首都圏に集中してしまっている仕事を地方で受けること』。沖縄県内や北海道内の企業からご相談いただくこともありますが、それは地元企業と競合してしまうので、お受けしていません。
私はそんなぶれない当社のことが好きだからこそ、私のように当社を愛し、誇りを持って働ける仲間を増やして、さらに会社の成長に貢献したいと思っています。それが地方経済への貢献にもつながっていくはずです」
江川は自身の目標として、将来的には「CHRO(最高人事責任者)のような存在をめざしたい」と語ります。
「経営目線で、人財に関わること全般を戦略的に考える人間になりたいと思っています。そのためにもマネージャーとして経験を積み、会社を力強くけん引できるようになりたいです」
ゼロから北海道の採用基盤を築いてきた江川はいま、会社の未来を「人」からつくる、より大きな役割へと新たに歩みを進めています。
一人ひとりの成長が、北海道の未来を切り拓く
人事のスペシャリストとしてプレイヤーからマネージャーへ、さらにその先の目標へ向けて研鑽を続ける江川。その大きな挑戦を足元で支えている情熱の源泉――それは、自ら採用に関わった社員が成長を遂げる姿を目にする瞬間です。
同社では入社者の約7割がIT未経験者ですが、6カ月間に及ぶ手厚い新入社員研修と現場の伴走体制により、プロフェッショナルへと育っていきます。入社前の段階から関わってきた社員が、数年後には難度の高いプロジェクトで顧客から絶大な信頼を得て、後輩を指導している。その光景を目にするたび、胸が熱くなると江川は語ります。
「採用は、その人の人生の大きな選択に寄り添う仕事です。首都圏と地元のどちらで働くか悩んでいた学生が、当社という選択肢があったからこそ地元で働くことを選び、エンジニアとして成長し、活躍している。さらにその方が結婚して子どもを持つなど、地方に根を張っていく。それを目の当たりにできることが、大きなやりがいになっています」
高水準な仕事と成長できる環境が地方に存在し、そこで生き生きと働くロールモデルが増えていくこと。それは、次世代の若者たちへ「地元で生きることも、キャリアも諦めない」という人生の選択肢を示すことにほかなりません。
「今後はさらに、子どもたちが当社の仕事を見て『かっこいい』『自分も地元でこんな仕事がしたい』と思ってくれるような会社にしていきたいですね。そのためには、規模も待遇もさらにレベルの高い会社に成長することが必要。私はこれからも人財の面から、そこに貢献していきたいと思います」
江川にとって「北海道を元気にする」とは、一人ひとりが地方で生き生きと働き、成長できる未来をつくること。その挑戦は、これからも続いていきます。

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