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なぜ“ITベンダー”が経営課題解決を支援したのか。「ムヒ」の池田模範堂とキヤノンS&S、次の100年への挑戦

2026年7月27日

挑戦を追う

2026年に発売100周年を迎える、かゆみ止め薬のロングセラー「ムヒ」。その製造販売を行う株式会社池田模範堂は、創業117年を迎える老舗製薬会社です。

同社は「次の100年」を見据え、めざすべき未来の方向性を定めるために、自社の存在意義を言語化したパーパスを策定。しかし、それを社内にどのように浸透させ、経営の軸として生かしていくか、という悩みを抱えていました。

そこに寄り添い、課題解決をサポートしたのが、キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループの一員であるキヤノンシステムアンドサポート(以下、キヤノンS&S)。

お客さまから見てオフィス機器やシステムの導入、運用・保守までを担う「ITベンダー」が、なぜ経営課題の解決をサポートすることになったのか。そして、この取り組みを経て両社が描く未来の姿とは。

池田模範堂 専務取締役の池田嘉寿人(いけだ かずと)さんとプロジェクト推進メンバーの内薗透(うちぞの とおる)さん、そして、パートナーであるキヤノンS&Sの井田康明、長谷川達郎に話を聞き、その“挑戦”に迫りました。

老舗企業が直面した「目線のズレ」

薬の生産地として名高い富山県を拠点とする池田模範堂。1909年の創業以来、一般用医薬品(OTC医薬品)を主力商品に成長を続けてきました。中でも主力ブランドであるかゆみ止め・虫さされ薬「ムヒシリーズ」は、多くの人から愛されるロングセラー商品です。

池田模範堂 専務取締役 池田嘉寿人さん

同社は、2025年6月にパーパス策定を発表。その背景には、変化の大きい時代の中、これまでの経営理念では対応しきれないという不安がありました。池田さんは、こう振り返ります。

「当社は創業から100年以上の歴史を持ち、社員数も300人を超える規模となりました。ただ近年、組織内の『目線のズレ』を感じることが増えていたのです。理念を定めた元会長(2代目社長)を直接知る人も減り、市場環境も大きく変化する中で何を判断の拠り所にするべきか社内の目線が合っていない感覚がありました」​

その「ズレ」は、現場の社員も感じていたといいます。研究開発部の内薗さんは、当時のもどかしさをこう語ります。

池田模範堂 研究開発部 内薗透さん

「『いい会社をめざそう』という姿勢は共通するものの、売上・開発・生産効率・品質など、重要視する軸が部門により異なる感覚がありました。新商品やブランド作りに挑戦しても、部門横断の議論が平行線をたどり、なかなか結論が出ない状況が続いていたんです」

「このままではいけない」——そう感じた同社は、現場の社員を中心に、自社の存在意義や強みを掘り下げる勉強会を開催。その過程で「パーパス」という概念に行き着き、経営層も交えた部門横断のパーパス策定プロジェクトを始動しました。

そうして数年をかけて議論し策定されたのが、「唯一無比のこだわりで 『心に残る喜び』を生み出し、よりよい日常に変えていく」というパーパス。

「私たちは創業以来、市場に新しい価値を生み出し、皆さんに喜んでいただくことにこだわって事業に向き合ってきました。『いままで諦めていた悩みが改善された』などの喜びは、使ってくださった方たちの心に残り、日常によい変化をもたらします。当社とつながるすべての人々の日常をよりよくしていきたいという想いを込めました」(池田さん)

「パーパス浸透」の壁と、キヤノンS&Sのグループ横断支援

しかし、そこで直面したのは「パーパスを社内にどのように浸透させるか」という新たな課題でした。

「パーパスは“作って終わり”ではありません。社員一人ひとりの行動や判断の指針として根づかせていく必要がありますが、そこが最も難しいところでしたね」(池田さん)

経営層など上からの働きかけが強すぎると押し付けがましくなり、逆に何もしなければ浸透しない。どのように進めればよいか、池田さんは他社事例をリサーチ。

「ただ、成功例は数多く見つかるものの、浸透の過程でつまずいたポイントなど、“リアルな体験談”はなかなか見つけられなかったんです」

その悩みに応えて、実体験に基づく知見を共有したのが、長年システムの運用や保守を支えてきたキヤノンS&Sでした。担当者・井田はこう振り返ります。

キヤノンS&S 営業統括部門 東京営業本部 井田康明

「それは、ちょうどキヤノンMJグループがパーパス策定を社外公表した頃でした。

私たちはITベンダーなので、もちろんお客さまのパーパス策定や浸透を支援した前例はありません。しかし、1万人を超えるグループ全社でパーパスの浸透に取り組む中で、一管理職としてもそれを現場に浸透させていく難しさをまさに実感していました。だからこそ、『パーパス浸透のリアルな体験談を教えてほしい』というお声に、なんとかお力になりたいと思ったんです」

そこで井田は、グループ内でパーパス策定・浸透を推進していたキヤノンMJのサステナビリティ推進部に自らかけ合い、連携を実現。組織・部門の垣根を超えて体制を構築し、池田模範堂にリアルな事例や知見を共有する支援をスタートさせたのです。

「座談会」を通して見えた経営層と社員の情熱

キヤノンS&S 営業統括部門 東京営業本部 長谷川達郎

支援にあたっては、以前からITサービスで面識のあった経営層と社員にヒアリングしながら、池田模範堂が抱えるパーパス浸透の課題を明確化。キヤノンMJグループの事例を共有しながら、打ち手のヒントを探っていきました。中でも課題解決に大きく貢献したのが、役職を超えて自由にディスカッションを行う施策の事例。井田と共に支援を行った長谷川はこう語ります。

「キヤノンMJグループでは、社長と社員が直接対話する場を設け、社長自らパーパス策定の背景や想いを語ったり、社員と意見交換を行ったりしています。この『経営と現場の距離を縮める場』を設けるノウハウがお役に立つのではと考えました」

実は、池田模範堂社内でも、経営陣と現場が直接対話する座談会案は出ていました。しかし、前例がなく、「パーパス策定に関わった社員と、それ以外の社員との温度差が生まれてしまう」などの懸念もあり、実施すべきかを迷っていました。

「キヤノンMJグループさんにノウハウを共有いただく中で特に印象的だったのは、『経営陣が自分の言葉で直接パーパスを語ることが、何より大切』という言葉です。1万人超の社員を抱える企業が、パーパス浸透を実現してきたからこその説得力に強く背中を押され、自分たちも挑戦してみることにしました」(池田さん)

いざ座談会を実施してみると、「よい意味で予想を裏切る発見があった」と語る池田さん。社員の方たちが想像以上にパーパス、そして会社に対して熱量を持っていることを実感できたというのです。

「パーパスの解釈を積極的に質問する社員が多く、会社への率直な意見も聞けました。ネガティブな意見もあがるだろうと予想していましたが、実際は、会社の未来を真剣に考え、語り合う社員ばかりだったんです。これまで断片的に聞こえていた不満の声も、決して会社へのコミットメントがないからではなく、『会社が好きだからこそ、こうなって欲しい』というポジティブな想いの裏返しだったのかもしれません。座談会が、社員のポジティブな想いを表出させるきっかけになったと感じました」

パーパスを起点に生まれた、新たなプロジェクト

こうして、社内で対話が活発化し、「パーパスに沿った中期計画」や「部門独自のビジョンの策定」など、パーパスを起点とした動きが各部門へと広がっていきました。池田さんは、パーパス策定・浸透が、会社が「社外」へ視野を広げる大きな契機になったと語ります。

「これまでは、独自の技術を磨くことで成長を続けてきた反面、社外の動きに意識を向ける機会がそれほど多くありませんでした。しかし、パーパス策定後は、よりたくさんの『心に残る喜び』を生み出すために、外に目を向けなければならないという意識が生まれ、これまで社外との交流が少なかった部門も、積極的に他社と交流を持つようになったのです」
そして、ここでもキヤノンS&Sとのコミュニケーションや情報交換を通じて、「資源再生」や「防災備品の見直し」といった新たな連携が始まっています。

まず、「資源再生」については、キヤノンS&Sがグループ内の環境活動事例を共有。使用済みインクカートリッジの回収・リサイクル活動「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」の紹介や、使用済みのキヤノン製品を回収してリユース・リサイクルを行う工場「キヤノンエコテクノパーク」の見学会を実施しました。

「事例を共有いただいたことにより、『サステナブルな社会に向けて、自分たちに何ができるか』を一歩踏み込んで考えることができました。ノウハウを参考に、現在当社でも、製品の容器やキャップの再資源化など、新たなプロジェクトの検討を進めています」(池田さん)

さらに、パーパスを体現するためには、BCPの観点からも、基盤となる「社員の安全」を守る体制を進化させていく必要があると判断。その一歩としてキヤノンS&Sが備品の選定、運用方法やメンテナンスまでサポートし、防災備品の刷新が実現したのです。

  • BCP(Business Continuity Plan)…災害や緊急事態が発生した際にも、従業員の安全を確保しながら事業を継続・早期復旧するための「事業継続計画」のこと

共に「ワクワクする未来」を創り出すパートナー企業へ

パーパス浸透施策、そこから新たなプロジェクト始動へと協働の幅を広げる池田模範堂とキヤノンS&S。池田さんは、「キヤノンS&Sは、パーパスを体現し、ビジョンを実現するための大切なパートナー」と語ります。

「長年、システム運用・保守の面でお世話になってきましたが、いまはITベンダーという枠を超え、私たちの挑戦に寄り添い、後押ししてくれる存在です。幅広い知見を共有いただき、大きな刺激を受けています」

井田も、経営者の方々との継続的な対話を通じて、お客さまの想いを具体的な取り組みへつなげる支援をさらに広げていきたいと話します。

「キヤノンMJグループは『想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く』というパーパスを掲げています。その姿勢を広く知っていただくため、企業CMでは『超ワクワクする未来を実現する会社』というキャッチフレーズを展開していますが、一方、池田模範堂様もパーパスに基づく『ビジョン2035』の中で、『ワクワク創造企業』という言葉でめざす姿を表現されています。

事業内容が異なっても、共に『ワクワク』を生み出す存在をめざす企業として想いを共有し、今後も中長期的な視点を持って、池田模範堂様のさまざまな挑戦と進化を支援していきたいです」

近しい志を胸に未来を描く両社の挑戦は、ここからまた新しく始まっていきます。


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