このページの本文へ

セーフィー、キヤノンMJのトップ対談で見えた、協業のシナジー効果と映像データが切り拓く未来

2025年7月29日

私たちの想い

2010年代からネットワークカメラを核とした事業の成長を目指しているキヤノングループ。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)グループにおいても、ネットワークカメラを軸にネットワークビジュアルソリューションを映像ソリューション領域における成長戦略の一つと位置づけ、さまざまな強みを持つ企業とのパートナーシップを積極的に構築し、戦略的にポートフォリオを拡充してきました。

その流れの中で、キヤノンMJが2017年に資本業務提携を結んだのが、カメラ映像をクラウド化し、社会のために活用できる映像プラットフォームを提供しているセーフィー株式会社(以下、セーフィー)です。流通・小売業における課題解決を主軸としてスタートしたこの協業は、製造、医療・介護業などにも領域を広げ、パートナーシップを強化しています。

今回、両社のトップ対談が実現。セーフィーの創業メンバーであり、同社 代表取締役社長CEOの佐渡島 隆平氏をお迎えし、キヤノンMJ 代表取締役社長の足立 正親と、映像データが切り拓く未来や、それに伴う社会的責任などについて語り合いました。

社会の心理的安全性や寛容さをも生み出す、映像データによる「現場のDX」

キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役社長 足立 正親

足立:ようこそお越しくださいました。セーフィーさんとの協業は9年目になりますね。今回は「映像がもたらす未来」について語り合えるということで、とても楽しみにしていました。まずは、御社の映像データを活用した事業について、あらためてお聞かせいただけますか。

佐渡島氏:こちらこそ、お話しできることを楽しみにしていました。私たちセーフィーは、例えば、商業施設や病院、工事現場などに設置されたカメラの映像をクラウド化してAIと連携させることで、活用しやすいデータにしてお届けするといった映像プラットフォーム事業を展開しています。

遡ること11年、2014年の会社設立時に描いたのは、データ駆動型社会の到来でした。データが重要なインフラになるのは当時から明白で、加えて即時性の高さが価値を持つだろうと。その上で映像に着目したのは、映像こそ最も情報量が多く即時性の高いデータになり得ると洞察したからです。

人で例えると「眼」であるカメラと「脳」となるAIですね。この2つを掛け合わせることで、防犯対策や安全管理といった、今まで人が力わざでこなしてきた多くのことを代替でき、それによって社会の安心・安全をより広くカバーできるようになります。例えば、火災報知器と連動させれば、人が現場にいなくても状況を知ることができ、スプリンクラーや防火扉との素早い連携も可能です。また、ドライブレコーダーの映像と運転データを掛け合わせて、運転者ごとにパーソナライズされた指示を行ったり、運転自体を自動補正したりもできるようになるでしょう。

セーフィー 代表取締役社長CEO 佐渡島 隆平氏

足立:データの掛け合わせによって、映像データの価値に無限の広がりが期待できますね。当然、防犯対策や安全管理の用途にとどまらず、マーケティングや業務課題の解決などでの活用も想定できますよね。

佐渡島氏:そうですね。あるうどんチェーン店さんでは、テーブルの片付け状況やスタッフの動線、お客さまの待ち時間や滞在時間、単価など、映像と周辺データをクロスさせることで、これまで感覚知で捉えていたものを可視化しています。それによって、オペレーションや動線の改善など、今ある不具合の解消につなげています。

また、多くの飲食店は、かかってくる電話の6割以上が空席の問い合わせだそうです。もし店内の映像データを活用して応答を自動化できたら、すごく便利ですよね。お店も利用者側もWin-Winの仕組みです。

足立:まさしく、お客さまのさらなる価値創造につながる一歩踏み込んだ思考であり、取り組みです。当社の相談の中でも、工場や工事の現場で軽量・小型のボディカメラを作業着の胸ポケットに取り付けて業務にあたるといった活用例があります。遠隔で若手作業員がベテラン作業員の指示を仰ぎながら保守業務などに携われるため、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。

佐渡島氏:そうですね。さらに、そうした思考は新たなビジネスモデルの創出にもつながっていくはずです。そして、映像データによる現場のDXによって人の意思決定をよりなめらかにしていくことが、私たちの使命でもあります。そこで創造された社会は、皆さんに精神的・物理的な余裕をもたらし、心理的安全性や寛容さも生み出していくのではないでしょうか。

「映像から未来をつくる」ビジョンと、未来マーケティング企業として“人を巻き込む”姿勢が生んだシナジー

足立:先にお話しいただいた現場のDXと社会への影響は、まさにその通りですね。「映像から未来をつくる」というセーフィーさんのビジョンを体現されていると感じます。

佐渡島氏:私たちのビジョンは、事業計画であり企業そのものともいえます。異才を認め、三方よしな仕組みを築くカルチャーを大切にして、夢を語り、人を巻き込みながら、世の中に散らばる小さな「不」の解消に向けてお客さまの想像を超えていきたいですね。

足立:「『不』の解消に向けてお客さまの想像を超えていく」ために、是非とも一緒に取り組んでいきたいところです。また、「人を巻き込む」という姿勢は、私たちキヤノンMJグループも非常に大切にしています。

キヤノンMJグループは、1968年に、よりお客さまの近くで販売・サービスを行える体制を確立するため、キヤノン株式会社から販売部門が独立してカメラ・事務機器の販売会社として誕生し、お客さまの課題に応える形で、ソリューション領域へと事業を拡大してきました。2024年には社会課題の解決を加速したいという想いを込めて、新たにパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を公表し、「未来マーケティング企業」を宣言しました。

キヤノンMJグループのパーパスを視覚的にわかりやすくビジュアル化したシンボルマーク。「想い」と「技術」がつながり、連環し、無限大に広がっていく様をイメージ化している

ただし、それは決して自社だけで成し得られるようなことではありません。お客さまの想像を超えていくためには、まさに「巻き込む」の言葉通り、多くの企業をはじめとしたステークホルダーとさまざまな形でパートナーシップを築くことが必要です。私たちが持ち合わせていない卓越したアイデアや技術を持つ人や組織と手を取り合うことで、想像を超える未来を切り拓いてきましたし、これからも切り拓いていきたいと考えています。


その流れの中で2017年から続くセーフィーさんとの業務提携も、私たちが注力するネットワークカメラなどを活用したネットワークビジュアルソリューション事業を中心に映像ソリューションを発展させる上で欠かすことはできません。

佐渡島氏:私たちとしても、ビジョンを実現するには、カメラという「眼」を社会に浸透させる必要があり、それにはB to B市場への参入は避けては通れないものでした。けれども、立ち上げ間もない企業が1社だけで頑張ってみてもスケールアップできる規模はたかが知れています。

キヤノンMJさんが持つ、さまざまな企業とのパートナーシップと、エンタープライズからスモールビジネスまでカバーする販売網と顧客との信頼関係は、私たちが一朝一夕で手にできるものではありません。さらに、私たちはカメラ自体の製造を手掛けているわけではなく、「映像プラットフォーム」を提供することで裾野を広げる戦略をとっていますので、この協業は重要なターニングポイントとなるものでした。

足立:私たちから見て、「カメラ映像がクラウド上に記録され、スマートフォンやタブレットなど手元で確認できる」というセーフィーさんが提供されている映像プラットフォームの身軽さは非常に魅力的でした。大手企業から中小企業、個人事業者まで幅広い顧客層の課題解決につながる強力な切り札になると思いましたし、実際にその通りになりましたよね。

佐渡島氏:互いの持ち味を補完し合うことで、シナジーが生まれているのだと思います。提携し始めた頃の話になりますが、私の子どもが通っていた幼児教室に、あるときキヤノンMJさんが展開する「見守りカメラ」が設置されたのを目にしたんです。われわれが思い描いていたことが現実になっていく喜びを感じたと同時に、保護者の立場として安心したことをよく覚えています。

映像データのオープン化とプライバシーの問題を率先して議論し、ガイドラインを示す

足立:実際の保護者の方から良い反応をいただけると嬉しいですね。一方で、そのように映像データが広く社会に普及するということは、プライバシーやセキュリティへの配慮も必要になってきます。例えば、身近なところでは、Googleのストリートビューによる人や住宅などの映り込みとプライバシー侵害が議論になりました。

佐渡島氏:そうですね。ストリートビューへの映り込みに関しては、判例もあり、個人が特定される情報はボカシなどを入れる必要がありつつも、「景色の一部」としてみなされているのが実情です。とはいえ実際のところ、映像とプライバシー保護については、法整備が追いついていないのが現状だと思います。

ですから尚更、映像データを扱う者として自ら襟を正し、映像の活用性を高めつつも、誰かが不利益を被ることがないよう率先してガイドラインを示すことが、安心・安全な社会をつくり社会的責任を果たす上でも重要になるはずです。そのためセーフィーでは、独自に「データガバナンス委員会」を立ち上げました。委員会には人権や知的財産に詳しい有識者のほか、キヤノンMJさんにもメンバーに加わってもらい事業者視点での貴重なご意見をいただいています。

委員会では毎回、実に深い議論が交わされます。例えば、介護施設へのカメラ設置は、入居者からすれば着替えや排せつの様子を覗かれている感じがして抵抗があるでしょう。ただ、入居者の健康状態によっては、本人が倒れたときにすぐ気づくことができるという、命に関わるような利点もありますよね。人間の尊厳と命に関わる問題といえます。

足立:データのオープン化や活用とプライバシーの問題は常に背中合わせにあります。国民性や世代による考え方の違いも関係するだけでなく、テクノロジーの進化に伴って社会の認識も変化すると考えられますから、継続的な議論が求められるテーマだと思います。

「8がけ社会」の到来を見据え、パートナーシップは次のフェーズへ

足立:セーフィーさんとの協業を通じ、本当にたくさんの刺激を受けています。特に決断からアクションにかけてのスピードは特筆すべきものがあると感じています。

私は昔から、「考動(こうどう)」、つまり考えるだけでもダメだし動くだけでは結論は出せない、考えながら動くことで答えを見出せるという思考を大切にしています。セーフィーの皆さんは絶えず考えながら動いておられるから、新しい出会いや情報をキャッチする感度がものすごく高いですよね。

佐渡島氏:ありがとうございます。私たちは、キヤノンMJの方々から、お客さまへの価値提供に対する誠実さや人間力といったものを感じることが多いです。

例えば、ビジネス上の困難な場面でも胸を開いて議論を尽くしてくださる姿勢や、人と人とのつながりを非常に大事にされていること、弊社へ出向いただいているキヤノンMJの方が、片足どころか両足を突っ込む勢いで一緒に「映像から未来をつくる」ために動いてくださっていることなどに、そのような魅力が表れていると思います。

足立:セーフィーさんのような未来志向で志の高い企業との協業による成功体験や、お話しいただいたような出向などによって築かれるより深いつながりがあるからこそ、私たちは5年、10年後の社会を見据えた共創に力を入れることができています。

この2月に発表した、米国・カリフォルニアのMODE社とセーフィーさん、弊社の3社による業務提携についても、佐渡島さんからMODEさんをご紹介いただいたことで実現にいたりました。MODEさんの持つ生成AIを駆使したIoT技術との掛け合わせによって映像データがより有効に活用でき、あらゆる業界で業務の自動化や効率化が期待できます。

佐渡島氏:生産年齢人口が減少し、現役世代が今より2割減る「8がけ社会」の到来が確実視されている日本において、生産性向上が最重要課題になることは間違いないでしょう。

そこで、人が力を発揮すべきところに注力できるように、映像データを最大限生かしていきます。キヤノンMJさん、MODEさんと手を携えて映像を使った新しいソリューションやDXの形を提案していくことは、日本において有意義なアクションだと考えています。

さらに、国内で培った価値をグローバルに広めていくことも視野に入れていますので、パートナーシップがますます重要になると確信しています。これまで述べてきたビジョンだけでなく、「想像を超えろ」「超自分ごと化」といった私たちのカルチャーや想いと通じるキヤノンMJさんと、ますますいい関係性を築いていきたいと思います。

足立:もちろん、私たちも同じ想いでいます。これからもぜひ、希望あふれる未来に向け、共に歩んでいきましょう。今日はありがとうございました。


本記事に関するアンケートにご協力ください。

2分以内で終了します。(目安)