キヤノンITSが「大学づくり」のパートナーに? 総合力で支える少子化時代の学び
2026年6月26日
少子化に伴う入学者数の減少が進むいま、日本の大学は、かつてない変革の渦中にあります。「これからの社会で活躍できる人材の育成」や、そのための「教育の質」を保証し、学生に選ばれる大学となることが求められているのです。
そんな教育の質の向上を、ITインフラや教育支援プラットフォームの構築といった教育DXの側面から支えているのが、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)です。対応に苦慮する大学も少なくない中、どのような形でDXを支えているのでしょうか。文教向けソリューションを担当する、営業の小川 隼人さんと、システム開発の小山 寛治さんに話を聞きました。
少子化時代に選ばれる大学。鍵は「教育の質」と「独自の価値」
─まずは、日本の大学が直面している課題について、改めて教えてください。
小川:やはり、少子化による学生数の減少が最大の課題です。大学は、社会で活躍する人材の育成機関であり研究機関でもあります[1.1]が、その役割を果たすには、まず経営を成り立たせる必要があります。
そのため、いかに学生に選ばれる大学になるのかという観点から、単に教育・研究内容を発信するだけでなく、その取り組みの結果「学生がどのように成長するのか。社会にどのような価値を生み出すのか」といった「教育の質」や存在意義を広く訴求することも重要になっています。
─自校について説明する社会的責任やブランディングの重要性が高まっているのですね。
小山:はい。それに関連して国も指針を示しています。大学に対し、「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」「ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)」を定め、それらに基づいた教育を実践することで、「教育の質の保証」を求めているのです。
また、これらのポリシーを明文化し、実行状況や成果を公表することは、「この大学で学べば、どのような力が身につくのか」といった大学独自の価値を打ち出すことにもつながります。
ただ、その成果を客観的な形で示すのは容易なことではありません。そのため、自校の価値を明確に発信できている大学がある一方で、強みを把握しきれずに苦慮されている大学も少なくないのが現状です。
教育の質の向上を目指す、キヤノンITSのアプローチ
─「教育の質の保証」といった大きな課題を抱える大学を、キヤノンITSはどのように支えているのでしょうか。
小山:私たちキヤノンITSは、教育の質を「学生がいかに質の高い教育を受けられるのか。そのために、先生方がいかに質の高い授業を行えるのか」という視点で捉え、その土台となるITインフラと、実際の教育現場を支える教育支援プラットフォームの双方から教育環境をサポートしています。
小川:また、大学の先生は専門領域を持つ研究者でもあるため、小中高に比べて、それぞれの研究背景や個性などが授業に反映されやすいという側面があります。そのような独自性を損なうことなく、より質の高い授業を行っていただくためにも、それらの教育環境をさらに整えていくことが重要になります。
小山:例えば、LMS(学習管理システム)を通じて学習の進捗状況や成績などのデータが蓄積され、一元管理されることによって、これまで見えにくかった授業内容や評価が透明化されます。属人的だった大学の教育プロセスに客観的な指標が生まれ、学生にとって、より平等で質の高い教育機会が実現するわけです。
一方の先生方にとっては、出席管理などの事務的な負担が軽減されることで、教育の質の向上に向けた授業改善や研究活動といった、本来注力すべきことに充てる時間を創出することができます。また、研究成果や卒業後の進路といったデータは、大学独自の価値を高める資産にもなるでしょう。

小川:こうした、質の高い教育機会の実現や先生方の時間を創出するために、私たちが提供しているのが、キヤノンITSが独自開発した教育支援情報プラットフォーム「in Campusシリーズ」です。学内情報発信の窓口となる「in Campus ポータル」と、授業で利用される学習管理システム「in Campus LMS」を中心に構成され、大学教育で必要とされる主要な機能を装備しているほか、学内のほかのシステムとの連携や機能追加などのカスタマイズにも柔軟に対応できます。
小山:私たちキヤノンITSは、もともと、大学へのPCをはじめとするハードウエアの導入サポートにおいて多くの実績があります。その経験から、大学固有の課題や急速なデジタル化の波に対応するには、汎用型のソリューションではなく、それぞれの大学の状況やニーズに合わせたソリューションを開発・提供する必要があると考えました。
小川:そのようなビジョンのもと、2013年に明治大学さまと共同開発し導入いただいた教育支援情報システムが、学生・教職員の教育環境向上に直結した実績を経て、現在のin Campusシリーズの土台になっています。
明治大学さまの場合、独自の機能として、学生同士で課題を評価し合える「ピアレビュー(相互評価)」などを実装しています。また、2024年にポータルを、2025年にLMSをリニューアルし、2026年の現在も数万人規模の学生に利用いただける安定した稼働が続いています。
小山:さらに今後は、大学職員の業務効率向上や負担減にも取り組みたいですね。学校教育法に基づいて7年以内ごとに受ける必要のある「認証評価※」のための資料作成機能などを実現していきたいと考えています。
─蓄積されるデータを活用することで、いろいろな可能性が広がりますね。
小川:はい。出席率の低下や学習状況などからドロップアウトの予兆を捉え、支援が必要な学生を見つけ出すこともできるようになります。大学の中退率は平均2%ほどですが、少子化のいま、学びを諦める学生を減らし、次世代を担う人材を社会へ確実に送り出すことは、社会全体で取り組むべき切実な課題だと思います。
小山:「この教材や、この授業のステップだと学生がドロップアウトしやすい」といった大学側の課題が見えれば、具体的な改善アクションを取ることができますよね。これまでは、現場の経験や勘に頼らざるを得なかったことや、学生のやる気の問題として片付けられがちだったことが、客観的なデータとして可視化されることで、学生がより質の高い教育を受けられる環境が構築されていくわけです。
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※
国公私すべての大学、短期大学、高等専門学校に対して、定期的に文部科学大臣の認証を受けた評価機関(認証評価機関)による第三者評価(認証評価)を受けることを義務付けるもの。文科省HPより
丁寧なコミュニケーションを重ねて、現場の本質を掴む
─利用される教職員や学生の反応はいかがでしょうか。
小川:大学内の声を定期的に伺う中で意外に感じたのは、多機能よりも「つながりやすい・使いやすい」を求める声が圧倒的に多いことでした。実は、このニーズは、私たちにとって新しい視点であり、大学との丁寧なコミュニケーションを重ねて見えてきた本質でした。
小山:約9割の学生がスマートフォンからアクセスするという現状も重要です。スマートフォンを前提としたデザインの最適化や、目的のページまで最小限のタップで到達できる動線設計など「モバイルファースト」の視点も欠かせません。
こうした現場の要望を迅速・正確に反映できるのは、私たちキヤノンITSの導入から運用までの一貫したサポート体制だからこそだと考えています。
─構築して終わりではなく、伴走し続けることで信頼が深まっていくのですね。
小山:はい。日々の迅速なトラブル対応や、丁寧なコミュニケーションを通じて得られる現場からのフィードバックこそが重要です。
小川:また、一般的には、大学のITインフラと教育支援プラットフォームは別々の企業が担うケースが多く、その双方をサポートできるキヤノンITSのような企業は、そう多くはありません。ですから、「インフラの知見をプラットフォームに生かせる」「プラットフォームの知見をインフラに生かせる」といった総合力も、私たちの強みと自負しています。
小山:例えば、履修登録や成績照会などでアクセスが集中し、動作が遅くなったとします。その原因が、サーバーのスペック不足などITインフラ側にあるのか、検索プログラムの処理速度などプラットフォーム側にあるのか、蓄積された運用データやエラー状況などから全体を俯瞰して原因を特定できるため、迅速・最適な対策を取ることができます。
─システム全体を見据えると、サイバーセキュリティへの対応も急務となっていますよね。
小川:そうですね。ランサムウェアなどの脅威は社会問題化しており、実際に被害に遭われた大学や、対策を強化したいという大学のサポートをさせていただく機会も増えています。
小山:2年ほど前になりますが、ある大学がランサムウェアの被害に遭い、学内のシステムがダウンして、授業が2週間近くも遅れるという事案が起きました。客観的に判断して、キヤノンITSの責任は問われないケースでしたが、「学生たちの日々の学びを止めたくない」という一心で、無償の復旧サポートをさせていただきました。
小川:無事に授業が再開できたときに大学からいただいた感謝の言葉は、とても嬉しかったですね。セキュリティ対応も含め、システム全体を見据えたDX戦略が欠かせなくなってきているいま、私たちのようなITパートナーの役割は、ますます重要になってきていると思います。
文教ITパートナーとして、これからの教育環境を支える
─AIなどの先端技術が急速に普及する中で、キヤノンITSが果たしたい役割や、お2人の仕事にかける想いをお聞かせください。
小山:私たちは、教育の質をさらに高みへと引き上げるため、今後、AI機能を標準仕様として実装したいと考えています。例えば、教材をアップロードするだけで適切なテストが瞬時に生成されるようになれば、作成者の主観や固定の概念に依存しない評価が可能になります。こうしたAIの活用は、学生一人ひとりに、より平等で質の高い教育機会を提供するための大きな一助となるはずです。
一方で、学生の皆さんには、AIに頼り切るのではなく「自分で考える力」を養ってほしいと願っています。社会に出れば、自ら問いを立てて判断しなければならない局面が何度も訪れます。だからこそ私は、先端技術を取り入れつつも、最終的には学生が自らの思考を深め、その力を伸ばしていけるような教育環境を支えていきたいと思っています。
小川:私は、大学の教育環境を整備することは、結果として日本全体の経済や産業の活性化につながると信じています。「社会で活躍できる人材」を1人でも多く輩出するために、大学の教育の質をどう底上げできるのか。そのために、どのようなお手伝いができるのか。常に意識しながら日々の仕事に向き合っています。
ただ、私たちはあくまで裏方です。教育の質を支えるシステムそのものを「キヤノンITSがサポートしている」と認識されることはなくとも、それらシステムを通じて学んだ学生たちが、社会に出て活躍することこそが、私たちの仕事が社会に還元される形なのではないでしょうか。キヤノンITSが長年培ってきたノウハウを生かしながら、大学の教育環境を支え、未来に向けてともに歩む「文教ITパートナー」であり続けたいと思います。
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