page2025 キヤノンブース レポート


印刷メディアビジネスの総合イベント「page2025」出展生産現場の自動化・省力化を推進するインクジェットテクノロジー採用製品とソフトウエアソリューションを展示
キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は、東京・池袋サンシャインシティコンベンションセンターで2025年2月19~21日まで、「共奏」をテーマに開催された印刷メディアビジネスの総合イベント「page2025」に出展しました。キヤノンブースは「印刷の未来を創造する」をテーマに、商業印刷・産業印刷業界向けのデジタル印刷機に加え、近年の印刷業界が抱える自動化・省力化という課題の解決につながるソリューションの紹介・展示を行いました。
「imagePRESS Vシリーズ」の活用で印刷業務の自動化・省力化を推進
近年の印刷業の現場は、生産人口の減少を背景とした熟練技術者不足という深刻な課題に直面しています。印刷会社には業務の自動化や省力化、スキルレス化を推し進め、生産性の向上を図っていくことが求められています。
キヤノンMJは今回、そうした課題解決を支援するソリューションの1つである、カラーオンデマンドプリンター「imagePRESS V1000」に印刷業務の自動化・省力化を推進する自動化ユニットを接続し、「静電気で困っていませんか?」「カールで困っていませんか?」など、顧客が抱える課題を起点とした展示・紹介を行いました。

例えば印刷時に発生する「熱」は、印刷した用紙の波打ちや貼り付きを発生させ、それらを取り除く手間によって生産性を低下させます。「imagePRESS V1000」は定着ユニットの直後に「冷却ユニット」を標準装備し、後加工前の中間滞留を削減できます。ブースでは「imagePRESS V1000」から排出される用紙の温度をサーモグラフィーで旧機種と比較できるようにし、その効果を視覚化して訴求しました。

「imagePRESS V1000」によるソリューションのポイントは、実際に自動化や省力化を進めていく際に生じるさまざまな問題を解決する機能を、それぞれ「オプションユニット」として提供し、利用する環境や活用状況に応じて導入することを提案している点です。例えば、印刷時に静電気の力を利用するオンデマンドプリンターでは、その静電気が原因となり、排紙部での用紙の貼り付きや積載の乱れといった問題が起きることがあります。従来はその度に作業を停止し、放電されるまでの待ち時間が発生していましたが、「除電ユニット」を装着することで直ちに後工程へ進めます。
「インスペクションユニット」や「センシングユニット」は、生産性低下の要因である人手による手間と時間を大幅に削減します。「インスペクションユニット」は、汚れや位置ずれ、角折れといった不良品の検出を各種センサーで行い、検品作業を自動化します。「センシングユニット」は、日々行われる印刷機の色味調整や用紙の表裏合わせといった印刷前作業を自動化し、オペレーター拘束時間削減による生産性向上を実現します。

カラーオンデマンドプリンターのセクションでは、封筒の大量印刷における省力化・効率化を実現する「imagePRESS V900+封筒フィーダー」モデルを展示しました。これまで封筒印刷の分野で主に使われてきた軽オフセット印刷機では、小ロット化による手間の増加や、オペレーター確保の難しさといった課題がありました。こうした課題を解決できることから、近年、改めて注目度が高まっているソリューションです。

印刷業界の構造的な課題を解決するインクジェットテクノロジーをさまざまな領域に展開
今回の展示でもう1つの中心としたのが、キヤノンが次世代印刷の主力技術と位置付けるインクジェットプリンターです。オペレーターの高齢化や人材育成の難しさといった問題を根本的に解決するためには、操作や管理が容易で、1人で複数台を扱うことも可能なインクジェット印刷機の導入が欠かせません。
近年、印刷機器の老朽化や保守パーツ切れを背景に、オフセット印刷からインクジェット印刷を中心とするデジタル印刷への移行が検討されはじめています。その中でも、現在発売に向けて開発が進んでいる「varioPRINT iX1700」は、高品位な印刷を実現するエントリーモデルのインクジェット印刷機として大きな注目を集めています。

印刷物の多様化も進んでいます。キヤノンではそうしたニーズへの対応の一例として、インクジェット印刷コーナーの壁面装飾に、キヤノンの産業印刷向けのインクジェットプリンターである「Colorado M5/M5W」で印刷された壁紙を利用しました。紙はもちろんのこと、ビニールやポリエステル、テキスタイルなど多様なメディアに印刷可能なため、壁装材や屋内外のサイネージ、ポスターと幅広い用途でも注目が高まる機種です。


建築や設計、フォトグラファーといったプロフェッショナルや、高品質なポスターを必要とする流通・小売・飲食からのニーズに応えるワイドフォーマットのインクジェットプリンターは、2台の新機種を展示しました。高品位ポスター画質大判プリンター「imagePROGRAF GP-4600S」は、新たにオレンジインクを加えたことで、鮮やかで温かみのあるプリントが可能になりました。写真高画質を実現する大判プリンター「imagePROGRAF PRO-2600」は、最新の12色インクを搭載することで圧倒的な写真画質と高い保存性を実現しています。両機ともに、画質だけでなく、ロール紙を入れた際に用紙の種類や幅、残量を検知する機能が搭載されているほか、内部の確認のためにLEDライトが搭載されるなど、従来機よりもメンテナンス性や生産性も高まっています。

ソフトウエアソリューションで自動化・省力化だけでなく新規ビジネスの立ち上げも支援
「ソフトウエア自動化支援コーナー」では、キヤノンの各種印刷機と組み合わせて利用するためのさまざまなソフトウエアを、顧客の課題に沿って紹介しました。キヤノンの「Production Print Flow Manager(PPFM)」は、印刷データの選択ミスや設定ミスを防ぐためのソリューション。印刷物のヘッダー部分に指示情報(カンバン)を同時印刷することで、指示書と印刷物の照合作業を不要とする「指示書レスプリント」を実現します。「PRISMAremote Manager」は最大25台の印刷機器を一元管理できるソリューション。印刷ジョブの進行状況や稼働状況をリアルタイムで可視化し、順序の入れ替えや終了時間、用紙切れのタイミングなどを一度に確認できます。複数の印刷機を1人でオペレートできるようになるなど、生産業務を大幅に効率化します。

キヤノン製以外のソフトウエアの活用によるソリューションも紹介しました。グーフの印刷計画最適化支援システム「OneFlow」は、多ジョブ・多配送の現場で後工程の仕分け作業を減らすよう印刷オーダーのグルーピングや面付けを最適化し、作業効率を向上させます。店舗ごとに必要な種類や枚数が異なるため、作業が複雑になり、オペレーターの負荷が大きくなりがちなPOP印刷の効率化シナリオを紹介しました。「Amendo」は、写真の内容(人物や植物、空など)を判別して最適な補正を自動で行うソリューションです。学校の卒業アルバムや商品カタログなどでの写真補正作業の負担を軽減します。印刷会社の新たな収益源として注目されているデジタルサイネージに向けたソリューションとしては「RICHKA CLOUD」を紹介しました。AI(人工知能)の力を活用して印刷物と連動したデジタルコンテンツの制作を実現します。

今回のキヤノンブースでは、スマホやタブレット端末、パソコンから簡単に高画質な写真プリントが楽しめる、昇華型熱転写方式プリンターの「SELPHY」を利用した、新しいビジネスモデルの提案も行いました。タブレット端末で動作する「ランダムフォトアプリ for SELPHY」と「SELPHY」を組み合わせたソリューションを事例として展示しました。
これはタブレット端末でスタートボタンを押すと、あらかじめ登録されている画像の中からランダムで1枚の画像が「SELPHY」でプリントされるサービスです。アイドルやアニメなどのイベント会場で、従来はグッズとして販売していたランダムフォト(目隠しパッケージでどの写真が入っているかわからない状態で販売)を、アプリを通して「SELPHY」からプリントする仕組みにアップデートし、運営側の手間の削減だけでなく、お客さまがワクワクするような“エンタメの時間”を実現しました。キヤノンはこうした仕組みを実現するためのSDKを公開し、SELPHY CP1500/CP1300を利用したシステム開発を容易にする支援をしています。

先進的な印刷機・プリンターの開発だけにとどまらず、印刷業の現場の課題解決を重視したソリューション提案を行うキヤノン。インクジェットテクノロジーで広がる、印刷ビジネスの新たな可能性にぜひ注目ください。